楽天はモバイル事業をどのようにとらえているのか、NTTドコモのおサイフケータイや電子マネーのEdyはどの程度普及しているのか――6月6日に東京都内で開催された「モバイルマーケティングカンファレンス2005」では、基調講演に楽天代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏、NTTドコモプロダクト&サービス本部マルチメディアサービス部長の夏野剛氏、ビットワレット代表取締役社長の川合成幸氏が登場し、これらの疑問に対する答えを明らかにした。
左からNTTドコモの夏野剛氏、ビットワレットの川合成幸氏、楽天の三木谷浩史氏 |
まず、楽天は「ケータイ版楽天市場」という名称で、携帯電話向けにも楽天市場を展開している。出店数は1万店以上、掲載商品数は約1000万点で、PC向けの楽天市場に規模面で近づいている。三木谷氏によれば、2005年12月期第1四半期(1〜3月)におけるケータイ版楽天市場の流通総額は42億5900万円で、楽天市場全体の7%程度を占めるという。「2005年末にはこれを15%にまで高めていきたい」(三木谷氏)
三木谷氏が携帯電話の特性として注目するのはその即時性だ。たとえば外出先のレストランでおいしいワインを飲んだとき、すぐにケータイ版楽天市場でそのワインを検索して購入できる。「店で出している値段のワインの市場価格がすぐにわかってしまう」(三木谷氏)と苦笑しながらも、商品を体験した瞬間に携帯電話で注文できる点がPCとの大きな違いだとした。
また、携帯電話とポイントを組み合わせることで、より効果的なマーケティングが可能になると三木谷氏はみている。携帯電話の場合、プッシュ型で情報配信が可能なためだ。
例えば楽天では現在、同社が保有するプロ野球球団の東北楽天ゴールデンイーグルスが勝利した日の翌日と翌々日はポイントが2倍になるキャンペーンを行っている。しかし携帯電話なら、キャンペーン情報をメールで配信してもすぐに見てもらえる可能性が高いため、イーグルスが勝利した日だけポイントが3倍になるというようなキャンペーンが効果的に行えると話す。
楽天市場のほかにも、携帯電話を利用したサービスは始まっている。例えば楽天証券は6月3日から、株価チャートなどがリアルタイムに携帯電話で閲覧できる「iSPEED」をNTTドコモのFOMA向けに提供している。「携帯電話は今後の戦略上大きなポイントになるだろう」(三木谷氏)
おサイフケータイ対応端末は1000万台突破へ
夏野氏は、非接触ICのモバイルFeliCaが搭載された「おサイフケータイ」の現状について説明した。同氏によれば、おサイフケータイというコンセプトはiモードを始めた1997年ごろから温めていたものだという。「『いつでも身につけている』というのが、携帯電話の最大の強みだ。『生活をより便利にする』という点を考えたとき、必然的な流れとしてお財布機能を携帯電話に統合するということを考えた」(夏野氏)
おサイフケータイは2004年7月にサービスを開始し、対応端末の出荷累計台数は約370万台にのぼる。「iモードの場合、サービス開始から1年間で400万台を出荷したが、これを上回るスピードだ。2006年3月までには、確実に1000万台はいくだろう」(夏野氏)
おサイフケータイの利用も確実に進んでいるようだ。電子マネー「Edy」を提供するビットワレットの川合氏によれば、Edyの累計発行枚数は約1020万件で、そのうち約65万件は携帯電話によるものだという。
また、おサイフケータイの登場によって流通・小売業者側のEdyに対する姿勢に変化が生まれたという。「これまでは我々の営業が話をしに行っても門前払いをくうことがあったが、ここ1年くらいで『どうせ(Edyへの対応を)やるなら早く始めたい』という声を聞くようになった」(川合氏)。今後は特にコンビニエンスストアや食品スーパーなど、日々の買い物が行われる場所での採用が進むのではないかとした。
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