米上院は10日(米国時間)、米国民に身分証明に関する広範な義務を課す電子IDカード法案を満場一致で可決した。オンライン活動家らがそのカードの導入を食い止めようと直前まで抵抗していたが、その土壇場の試みは結局失敗に終わった。
「Real ID Act」と呼ばれる同法案は、今月中にBush大統領の署名を経て立法化される。Bush政権をはじめとする同法案の支持者らは、違法入国者による運転免許証取得を阻止するためにこの法律が必要だと主張している。
同法が施行される2008年5月以降は、米国土安全保障省(DHS)が定めた規格に沿った「機械で読み取り可能な技術」が組み込まれた政府公認のIDカードの取得が義務付けられる。そのようなIDカードを携帯しない者は、航空機や鉄道による旅行、銀行の預金口座の開設、政府関連施設への立ち入りが事実上禁じられる。
Real ID Actが最終的に可決されることは、発案者が同法案をイラクでの戦費を賄うための緊急支出法案に組み込んだ時点で、はほぼ確実視されていた。にもかかわらず、プライバシー保護を訴える熱心な活動家らは過去数日間、同法案に対する警告を発し続けた。
上院議員に送るオンライン嘆願書への署名を呼びかけていたUnRealID.comによると、最終的な署名者数は1万800人以上に上ったという。同サイトは、同法案を「ナショナルIDカード」と呼んでいる。
電子フロンティア財団(EFF)は先週、「Stop The Real ID Act!」という名称のキャンペーンを急遽立ち上げた。またACLUは同法案について、「ID窃盗を助長するシステム」を構築することになると非難した。さらに、セキュリティ分野の第一人者であるBruce Schneierも同法案を批判する評論を発表した。
仮にReal ID Actが、全く関係のない戦費調達のための緊急支出法案に組み込まれることなく単独の法案として提出されていたら、上院で可決されるか否かはより不透明だったであろう。
下院は今年2月、上院に比べ僅差である261対161で同法案を可決したが、一部の上院議員は同法案を批判した。Dick Durbin上院議員(イリノイ州選出、民主党)は先月、Real ID Actは事実上、ナショナルIDカードの作成を認めるものだと警告した。またNational Immigration Law Centerは、同法の成立により、合法的に米国に入国した移民や一般市民ですら運転免許証の入手が困難になると指摘した。
ウィスコンシン州選出の共和党下院議員でReal ID Actの発案者であるF. James Sensenbrennerは10日の上院での可決を賞賛した。「外国人テロリストがごくありふれた場所に潜み、活動を行なったり攻撃の計画を立てるのを阻止するのにReal ID Actは必要不可欠だ」と同氏は語った。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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