中心となる組織や目的さえもない、無秩序と言ってもよいこの仮想世界は、「病みつきになる」とされる現在のオンラインゲームより、はるかに中毒性の高いものになると推測する向きもある。
「PtoPの世界が山ほど存在していたら、人はそこにこもりきりになってしまうかもしれない」と語るのは、インディアナ大学教授のEdward Castronova。同氏はまもなく上梓される著書「Synthetic Worlds」のなかでオンラインゲームにまつわる問題を論じている。「ゲームの得点表に名を連ねることも、現実の経済システムに参加することももはやなくなり、彼らがどこに存在しているのかも把握できなくなるだろう。彼らは、貴重な物を生産しているのかもしれないし、豊かで生産的な社会/経済生活を送っているのかもしれないが、それらはすべて仮想世界のなかでの話だ」(Castronova)
「マトリックス」にはまだ遠い
もっとも、今日のゲームプレイヤーが待望するような、3次元のビジュアルと豊かな環境を持つPtoP仮想世界が実現するのはまだ先のことである。
同プロジェクトでは、グラフィック部分の制作だけでも大変だという。EverQuestのように大きな仮想世界になると、数千万ドルの制作費が必要になる場合もあるが、予算の多くはアートとデザインの部分に使われている。
Solipsisはこの点については非常に原始的で、人や「ボット」を表す2次元のイメージが、各ユーザーのコンピュータノードの青い空間に浮かんでいるというスタイルを採っている。別個に設けられたチャットルームでは、ノードを訪問したユーザー同氏がコミュニケーションを取ることも可能だ。開発者らは現在、グラフィックの制作や、今後のバージョンに搭載するボイスチャットなどの機能の開発を進めているという。
これに対し、Open Source Metaverse Projectのような他のプロジェクトのなかには、もう少し手の込んだものもある。Open Source Metaverse Projectでは、開発者が独自に3Dの世界を作り出せるようにするのが狙いだ。これらの世界は互いにハイパーリンクでつながり合い、訪問者がサーバー間を行き来できるようにしてある。このプロジェクトでは、人気ビデオゲーム「Quake」の開発者が生み出したモデリング技術を利用している。
Second Life
しかし、大規模な営利目的のプロジェクトのなかにさえ、草の根の方向へ進んでいるものもあり、これらのプロジェクトが未来への道を指し示している可能性がある。
たとえば、Linden Labsが開発した「Second Life」という仮想世界では、EverQuestのような従来のゲーム環境を提供する代わりに、そのなかで住人が自分の家を建てたり、独自の「ゲーム内ゲーム」をつくり出したり、ビジネスを行ったり、その他思いつくかぎりのことをほぼすべてできるような成長する世界を提供している。
「Second Life」には現在2万8000人の住人がいるが、なかにはこの世界の内側でつくったデジタルの物品を販売したり、ロールプレイングゲームを運営するなどで、すでに年間10万ドルを超えるお金を稼いでいる住人もいる。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」