Googleは、数学的なアルゴリズムやウェブを巡回するロボットを使って自動的に集めたニュースをユーザーに提供し、既存の新聞を出し抜くことを狙っているが、先週はこのニュースサービスにとって厳しい1週間となった。
同社は、フランスの通信社Agence France Presse(AFP)から訴えられ、膨大な数の写真やニュース記事を自社サービスから削除させられた。続いて、白人優越主義に傾倒するNational Vanguardの記事を組み入れた判断を激しく非難されたGoogleは、これに応えてインデックスから同サイトを削除することを明らかにした。
Googleの考えは、編集者が手を貸さなくても、コンピュータがその日のトップニュースを選び、従来のメディアを打ち負かせるというものだが、今回の2つの事件はどちらも同社のこの考えに疑問を抱かせるものとなった。
3年前にサービスが始まったGoogle Newsは、いまでもベータテストの状態にある。同社の説明によると、「Google Newsは極めて異例なニュースサービスで、人間の手を介さずに、コンピュータのアルゴリズムだけで編纂した結果を提供している」ということで、突然起こった2つの出来事はこのサービスと真っ向から対立している。
ニュースの読まれ方や配信方法が変化しているなかで、両者の間に生じた緊張は、Google Newsのようなサービスが経験している成長の苦しみを示すものとなった。読者は時間を節約し、関心のあるニュースを1カ所で見つけたいと考えており、そのためにGoogle Newsのようなニュース集約サービスを熱心に利用している。その一方で、さまざまなニュースが集まるこれらのサービスには、技術が提供できるもの以外にも何らかの基準が必要ではないかという問題も提起されている。
「これは検索可能なニューススタンドで、素晴らしい情報源だ」とJanice E. Castroは言う。ノースウェスタン大学のMedill School of Journalismでジャーナリズム専攻修士課程のディレクターを務める同氏はTime.comの元編集者でもある。「しかし、新聞の場合は『あれは良い。これはダメだ』と言えるのに対して、検索企業が提供するニュース集約サービスでは、どの記事も色や文字の大きさなどがすべて同じで、中味の質に応じてランク分けされているわけでもない」(Castro)
「最も優れたものが、決して最良とは言えないものと一緒に並んでいる」(Castro)
ウェブ上のニュースの収集や編纂に関して技術に依存しているGoogleでは、そのことで足下に火がついている。これと対照的に、Yahoo Newsでは、検索で集めたニュースだけでなく、提携するコンテンツプロバイダーから集めたニュースも提供している。Googleは、コンテンツ所有者とのライセンス契約の有無についてはコメントを控えた。
加えて、Google Newsや、他の同じようなニュース集約サイトがかなり強力になっていることから、AFPなどの通信社では自社の存在目的やニュース配信戦略について再考を余儀なくされている。ますます多くの人々がニュースにアクセスするにあたって検索を利用するようになっており、また多くのウェブサイト運営者が変化する読者の要求に対して十分迅速に対応できずにいる。通信社や新聞社にとって、この状況は危険なものだが、それは以前なら自社サイトにアクセスしていたユーザーがこれらのニュース集約サイトに流れてしまうためだ。
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