ヤフーの展開するYahoo!オークションで、在庫を持たない状態での出品が2月1日から禁止された。これは、出品者が実際の商品を手元に持たないままオークションに商品を出品し、落札者が代金を振り込んだにもかかわらず商品を送らないなど詐欺行為をとれるトラブルが多発しているためだ。
こうした中、在庫を持たなくても出品できることを特徴とするECサイトが誕生した。それは、ヤフーが新ルールを定めた数週間後の2月21日にオープンした「バイマ」で、エニグモが運営している。
バイマはBuying Market(買い付け市場)を表現した造語で、一般ユーザーが買い付け人となって商品を店舗から調達し、購入希望者に販売するというECサイトだ。提示価格に対して売り手(買い付け人)と買い手(購入者)をマッチングさせるサービスなので、オークション方式とは異なる。取り扱う商品は新品に限定され、販売価格は買い付け人が買い付け代行手数料を上乗せした上で自由に設定することができる。プレミアム感の高い商品ほど、販売価格を高く設定しても売れる可能性は高い。購入者は、買い付け人が出品した商品を購入することも可能だが、自ら欲しい商品をリクエストすることもできる。
エニグモ 代表取締役共同社長の須田将啓氏(左)と田中禎人氏(右) |
バイマを利用するには、買い付け人も購入者も無料の会員登録が必要だ。その際、氏名や住所などのほかに買い付け人は商品販売代金の振込先金融機関の情報を、購入者はクレジットカード情報を登録する。
買い付け人は、店頭で「これは売れる」もしくは「バイマでリクエストがあった商品だ」と目を付けた商品を購入前に撮影し、写真データと共に販売価格や個数、販売の有効期限などを設定してバイマに出品する。購入希望者から注文が入ると、バイマからその連絡がメールで届き、店舗から商品を購入して発送する。
バイマの決済は、購入希望者が注文した際に登録したクレジットカードから購入金額を仮押さえするという独自のシステムを利用する。購入者が実際に商品を受け取った場合のみクレジット決済が正式に下り、買い付け人への代金はエニグモから支払われるため、バイヤーと購入者が直接金銭をやりとりすることはない。こうした方法を採るため、買い付け人は在庫を持つ必要がない上に、購入金額が未払いになる心配もない。注文が入った後、商品がすでに売り切れていたなど、買い付け人が何らかの理由で商品が購入できなかった場合には、売買が成立しなかった旨をサイト上の購入失敗ボタンをクリックすればメールで購入者に通知される。その時点で、購入者のクレジット仮押さえがキャンセルとなるので、返金などのやりとりも発生しない。
一方で購入者は、買い付け人が出品した商品を注文するだけでなく、「リクエスト機能」を使って自分が探しきれない商品を探してもらえるように、リクエストすることもできる。地方限定品や海外ブランドの日本未入荷品などの手に入りにくい商品を、世界各国に散らばる買い付け人にリクエストすることも可能だ。また、「友人の出産祝いにお薦めの品が欲しい」といったように、具体的な商品名を指定せずにリクエストを出すこともできる。
バイマへの登録費や会費、出品料は無料だが、売買が成立した場合は、売買成約手数料として買い付け人が商品価格の3%、決済システム手数料として購入者が同5%を負担する。売買成約手数料はバイマを運営するエニグモの収入となり、決済システム手数料はカード会社に支払われる。
このようなECサイトは、利用者が拡大するか否かで成功が決まる。サイトがオープンして約1週間経過した3月2日現在の登録者数は1390人で、売買が成立した数は64件だという。買い付け人が一般店舗で販売されている商品を写真撮影し、転売することに問題はないのだろうか。エニグモ 代表取締役共同社長 須田将啓氏は「弁護士にも確認したが、これは違法ではない」と述べ、「買い付け人は、自分で目を付けた商品を、在庫を持たずして写真だけで売りに出すことができる。そのため、バイマで自分の目利きが通用するかどうか試せる」と特徴を説明した。
また、エニグモでは当面バイマを独自で運営していくが、将来的には他サイトとの提携や、ポータルサイトにバイマをOEM提供することなども視野に入れたいとしている。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力