ある研究者のグループが、コンピュータネットワークで膨大な量のデータを素早く転送する方法を発見した。これにより、科学分野における世界的な共同作業が促進され、また将来の商用利用への道が開けることになった。
今回データ転送速度の記録を更新したのは、High Energy Physicsと名乗るチーム。同チームはピッツバーグ〜ロサンゼルス間で実験を行い、毎秒101Gビットの速度で一定時間データ転送を続けることに成功。そして、グリッドコンピューティングを想定したネットワーク接続速度の向上のために開催されたSupercomputing Bandwidth Challengeというコンテストで優勝した。
同チームが毎秒101Gビットのデータ転送を行えたのは、90分間続けられたデモのうちのわずか数分間に過ぎなかったうえ、ピーク時の転送速度も毎秒101Gビットをわずかに越えただけだった。しかし、カリフォルニア工科大学(Caltech)の物理学教授であり、同チームのリーダーを務めるHarvey Newmanは、「われわれには、この速度を再現できる自信がある・・・毎秒100Gビット超の転送速度を何時間か維持できるだろう」と電子メールのなかで述べ、さらに「毎秒130Gビットから140Gビット程度の転送速度なら実現できそうだ」と付け加えている。
この研究はまた、オーディオ、ビデオ等のデータを非常に高速にやり取りする、将来のアプリケーション開発への道も指し示した。「これまでには想像もつかなかったスケールやレベルで、情報共有やオーディオビジュアルを使ったオンデマンドの共同作業をどう統合していくかという点に関して、この実験は大きな影響は及ぼすだろう」(Newman)
同チームには、Caltech、Fermilab、CERN、マンチェスター大学、さらに韓国やブラジルなどの各大学から集まったコンピュータ科学者、物理学者、ネットワークエンジニアらが参加している。
ちなみに、この同じチームが1年前に記録したこれまでのデータ転送速度の記録は、毎秒23.2Gビットだった。また、新記録となった速度で転送されるデータ量は、同コンテストで過去2年間に出された記録をすべて合わせたものよりも、さらに大きいという。
別な見方をすると、(新記録となった)このデータ転送速度なら、米国議会図書館にあるすべての情報を送るのにわずか15分しかかからないということになる。なお、インターネット上での転送速度の最高記録は毎秒4.23Gビットで、インターネット2でも毎秒6.63Gビットに過ぎない。
今回の実験に使われたFast TCPというプロトコルは、CaltechのSteven Low教授が開発したものだが、これには標準的なTCPよりも上手に混雑を防止する特長がある。標準的なTCPが、データパケットのこぼれる速度で混雑を処理していくのに対し、Fast TCPはパケットがネットワークを移動する際に経験する遅れを観測する。
このテクニックによって、「ネットワークの混雑の度合いを(パケットのこぼれ具合をみて判断する場合に比べ)、いっそう正確かつタイムリーに計測できる。つまり、データの送信元では、混雑が深刻なレベルに達し、ルータのバッファがオーバーフロー状態となりパケットがこぼれ出すまで待たずに、対応できるということだ」とSteven Lowは電子メールインタビューで答えた。
今回の実験では、数カ所の10Gビットリンクや、全米の大学を結ぶ光ファイバーネットワークNational LambdaRail内に確保した4つの専用波長など、ハードウェアインフラの性能強化も全体の速度向上に役立っている。
この実験の目標は、地球各地の物理学者が、非常に大規模で大量のデータを処理するプロジェクトを共同で行えるようにする技術の開発だという。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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