ケータイでPC用サイトが見られるjigブラウザ、「年内には課金ユーザーが1万人に」

永井美智子(CNET Japan編集部)2004年11月05日 20時40分

 PC向けのウェブサイトを携帯電話で見られる「jigブラウザ」が人気を集めている。Javaプラットフォーム上で動くこのブラウザはNTTドコモやKDDIの第3世代携帯電話で利用でき、PC向けのサイトをそのまま見られる点が特徴だ。10月1日のサービス開始直後から大きな反響を呼び、課金ユーザー数は1カ月で4000人を突破したという。

  対応端末はNTTドコモのFOMA 900iシリーズ、KDDIのau WIN11H、W11K、A5403CA、A5406CA、A5407CAに限られており、利用料金は月額1050円、年額6090円と他の携帯用アプリケーションに比べて高額だ。

 それでもデータ定額制を利用して料金を気にせずウェブサイトを見られることなどが注目され、リリース当初から試用版のダウンロードにアクセスが殺到。サーバにアクセスできない状態が続いた。jigブラウザを提供するjig.jp取締役の岸周平氏によれば、「年内に課金ユーザー1000人を目標としていたが、1週間で突破してしまった」という。

jigブラウザを利用してCNET Japanを表示した様子

 当初は10台ほどのサーバで運用していたが、増強を重ねて現在は約50台のサーバを利用している。現在も課金ユーザー数は1日100人程度のペースで順調に伸びており、「年内には1万人に達するのではないか」と岸氏は自信を見せる。

「フルブラウザは表示スピードが命」

 フルブラウザはDDIポケットが京セラ製の端末AH-K3001VにOperaブラウザを搭載したことで大きく注目されるようになった。俗に「京ぽん」と呼ばれるAH-K3001Vは、発売当初から品切れがでるほどの人気を集めた。KDDIも12月下旬にOpera搭載端末を発売する予定だ。

 しかしAH-K3001Vの場合はPHSの回線を利用しているため通信速度は32kbpsと遅い。KDDIはOperaを利用した際のパケット料金を定額制に含まず、あえてパケット当たり0.21円という専用の料金体系を設定している。KDDIが定額制を適用しなかったのは、データ量の大きいPC向けサイトを無制限に利用されると帯域が逼迫するおそれがあるからだ。jig.jpでは同社のサーバでデータを圧縮してから端末に送ることでこの問題を解決した。

全体を見渡せる「縮小ビュー」の画面イメージ。赤枠で指定した部分を拡大表示できる

 jigブラウザの優位性について岸氏は、スピードの速さと使い勝手の良さを挙げる。「機能が多いブラウザを作ることはできるが、スピードが遅いと見られるページ数が限られてしまうために結局は使えない」(岸氏)

 jig.jpはデータを圧縮してパケット通信料を抑えるjigアプリというサービスをすでに提供しており、jigブラウザにもこの機能を応用することで表示速度を上げている。さらにPCと同じ感覚で利用できるよう、全体を見渡せる縮小ビューの導入やなめらかにポインタを動かす機能など、細かい点にもこだわっているという。

 ユーザーの声をすぐに製品に反映できる開発体制も強みのようだ。jigブラウザの開発に携わっているのは4人。リリース開始から1カ月で10回以上のバージョンアップを行い、現在のバージョンは1.1.4となっている。今後はPCとブックマークを同期させる機能など「携帯だからこそ必要な機能を追加していきたい」(jig.jpアプリプランナーの島田純氏)としている。

機能を絞った廉価版の展開も視野に

 課金ユーザーの属性を見ると、男性が95%を占めるという。年齢は20代後半から30代前半が多く、「お金はあるが時間はない、というユーザーが多いようだ」と岸氏は分析する。

 利用料金を1000円程度にしたのは「地図や乗換案内、ニュースなど月額300円のアプリを4つ契約するより安い」(岸氏)ため。ただし、「我々も1000円という価格が決して安いとは思っていない」(同氏)として、高機能版のほかに機能を絞った廉価版も提供していきたいとした。

 jigブラウザで一躍注目を浴びた同社だが、岸氏は「jigブラウザの会社だと思われることは不本意」とも話す。「我々が目指すのは、いわば“Palmの携帯版”。Palmでできることを、すべてiアプリやEZアプリでできるようにしたい」(岸氏)

 11月にはチャットをしながら写真の投稿ができる「jig写チャット」というサービスも開始した。また、TV番組を携帯電話で視聴できるアプリケーションも開発しているという。「当社の開発者が仕事をしながらオリンピックを見たいということで作ってしまった」(岸氏)。同社のサーバに映像を保存して携帯に配信する仕組みだが、著作権などの問題もあり実際のサービス開始は未定だ。

 「アプリの世界はいかに新しい仕様でどれだけ勝負できるかがポイントだが、実際はどこかの企業がビジネスモデルを確立するまで参入しないという状況がある。当社としてはコンシューマから料金をもらう代わりにコンシューマが欲しいものを作っていく」(岸氏)とした上で、「ゲームのアプリは多いが、ツールを提供している企業は少ない。ツールアプリでナンバーワンになりたい」と意欲を見せた。

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