MP3は、長年デジタル音楽の世界で無敵の王座を維持してきた音楽フォーマットだが、そのMP3がいまMicrosoftとApple Computerの競合技術に押されて陣地を失いつつある。
MP3はいまでも、ファイル交換者のお気に入りのフォーマットとして圧倒的な地位を誇っている。しかし、かつては普遍的だったMP3が、個人音楽コレクションのなかで占める割合は、過去1年の間に、静かに、だが着実に減少している。ユーザーのハードディスク内にあるコンテンツを追跡するNPD Groupの調査「MusicWatch Digital」によると、デジタル音楽コレクションにおけるMP3フォーマットの占める比率はこの数カ月で着実に下がっており、1年前には82%だったものが現在では72%になっている。
「ユーザーはいまでもMP3(の楽曲)をダウンロードしてハードディスクに保存しているが、ただし保存するよりも削除するスピードのほうが速い」とNPD MusicWatch Digitalのアナリスト、Isaac Josephsonは言う。「ユーザーの間には、CDからコピーした曲よりもダウンロードした曲のほうが使い捨てにしやすいと考える傾向がある。そして現在(MP3の)大半はダウンロードした曲だ」(Josephson)
このようにMP3の役割が少しずつ変わりつつある背景には、デジタル音楽業界で進行中のひとつの変化がある。同業界ではいま、無秩序なファイル交換ネットワークから、Appleの「iTunes Music Store」に代表される営利目的のサービスに、重点が移りつつある。
NPD MusicWatch Digitalの調査によると、MicrosoftとAppleが支持する2つのフォーマットは、この1年でそれぞれ約5%ずつ「ハードディスク・シェア」を伸ばしたという。同プロジェクトでは、インターネットとソフトウェアのトレンドを知る目的で、4万人のユーザーを対象に、そのハードディスクにあるコンテンツを調査している。
アナリストらは、このデータについて、MP3が人気を失っていることを示すものではないとしている。MP3でエンコードされたファイルは、他のフォーマットのファイルよりも使い捨てにされる傾向が強い、というのが彼らの説明で、ユーザーはいまだに多くのMP3ファイルをダウンロードしているが、それよりもファイルを捨てる速度のほうが早いだけだという。
NPDの研究者の推定では、2003年8月から2004年7月の間に、ユーザーがファイル交換ネットワークや自分の所有するCDからハードディスクに落とした音楽ファイルは数十億曲に上ったにもかかわらず、米国ユーザー所有のハードディスク内にあるMP3ファイルは7億4200万曲分も減ったという。これに対し、Windows Mediaフォーマットのファイルは5億3700万件増えたとJosephsonは述べている。
アナリストの中には、MP3はサンプルや一時保存のために用いるフォーマットに進化し、AppleやMicrosoftのフォーマットはデジタル音楽コレクションとして永久に保存する用途で用いられていると見る者もいる。
インターネットをモニタリングしているCacheLogicが今月発表した別の調査結果によると、MP3はいまだにファイル交換ネットワークでやりとりされる楽曲の大半を占めているという。
同社は10月8日と9日の2日間、2大ISPのネットワークを監視したが、この間にやりとりされた全音楽ファイルのうち、MP3ファイルは88%を占め、Microsoftのフォーマットはわずか5%にとどまったという。
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