コンピュータ関連のインストラクターを務めるMatt Bashamは、もう何年もCisco Systemsに公式トレーニングマニュアルを改善するよう示唆してきたが、ずっと無視されていた。だがここへ来て、同氏はついにCiscoの注意をひくことに成功したようだ。
Bashamは、フロリダ州クリアウォーターにあるセントピーターズバーグカレッジで情報技術・ITセキュリテについて教える教授だ。同氏は先週、自分でつくった800ページに及ぶCiscoのネットワーキング技術に関する教科書を、インターネット上から無料でダウンロードできるようにした。
この本の配信に応じたオルタナティブ系教科書出版社のLulu.comによると、この本がオンラインで公開されてから、最初の数日間で2000部以上がダウンロードされたという。
同カレッジで自らもCisco Certified Network Associateクラスのプログラムディレクターを務めているBashamは、「Ciscoのつくったカリキュラムも素晴らしい。だが、受講者が現実の社会で即戦力になれるようにするためには、なにか違うものが必要だ」と述べている。「このプログラムを受講する学生の約半数は、コンピュータの電源の入れ方すらよく知らない。だから、ごく初歩から始める必要がある。Ciscoのカリキュラムと教科書は、ある程度の知識があることを前提にして作られている」(Basham)
Bashamの解決策は、教科書出版業界を震撼させ、金欠気味の学生により安価な選択肢を提案するとされる、新しい出版技術の強力さを示すものといえる。
California Student Public Interest Research Group(CALPIRG)によると、大学1年生は平均で年間900ドルを教科書代に費やすという。こうした高すぎる書籍の問題は、一部の米国議会議員らの関心を引き付けており、彼らは教科書出版会社の価格設定方針について調査を行うようを求めている。また、カリフォルニア州やジョージア州など数州でも、インフレしている教科書価格の調査が行なわれている。CALPIRGでは、教科書業界がCD-ROMなどの高額な付属品をバンドルしたり、内容のほとんどが変わっていないのに改訂版を発売したりしていることを非難している。
インターネットと新たな印刷技術によってコスト削減と品質の向上が実現したことから、自らの書いた書籍をオンライン出版社経由で発行・配信し、読者がこれをダウンロードしたり、必要に応じて印刷したものを入手できるようにしている作家らが何千人もいる。また、この新しい出版モデルによって、Bashamのような著者がコンテンツをカスタマイズし、学生に最小限のコストで提供することも可能になっている。
「現在多くの大学生から寄せられる最大の不満は、本の値段が高すぎることだ」とLulu.comの最高経営責任者(CEO)Bob Youngは言う。「自費出版は、特にアカデミックな環境での書籍の配信方法に革命を起こしている。コンテンツのコストを削減するだけでなく、得られるコンテンツの質も向上させているのだ」(Young)
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