米上院がコンピュータ犯罪に焦点を当てた初の国際条約の批准に向け、審議を行っている。しかし、同条約はその内容をめぐり様々な論議を呼んでいる。
Richard Lugar上院議員(インディアナ州選出:共和党)は米国時間17日に行われた公聴会で、欧州会議(CE)のサイバー犯罪条約について「米国が国際法執行において指導的役割を果たし続けるのに役立つばかりでなく、国内外に在住する国民の安全強化にもつながる」ので早急に批准すべきだ、と述べた。Lugarは上院外交委員会(FRC)の委員長を務めている。
同条約の批准国には、現行法をネットワークへの不正侵入、ワーム/ウイルスの放出、著作権侵害といったコンピュータ犯罪に対応した内容に改正することが求められる。また、この条約には、参加国間の相互協力および犯罪者引渡しに関する取り決めも含まれており、すでにアルバニア、クロアチア、エストニア、ハンガリー、リトアニア、ルーマニアが同条約を批准している。
米国のBush政権は条約案を支持している。米国務省の法律顧問を務めるSamuel Wittenは17日の公聴会で、同条約が上院で承認されれば「米国は、コンピュータ関連犯罪の防止、調査、訴追を行う上で国際協力を得たり、提供しやすくなる」と述べ、さらに「サイバー攻撃に対する防御および世界規模のサイバー・セキュリティの向上に向けたわれわれの取り組みにおいて、このような国際協力は極めて重要だ」と語った。
また同条約には追加条項があり、人種、種族的出身といった特性に基づいて特定の人々を「コンピュータシステムを使って公然と侮辱した者」に懲役刑を科すことを批准国に義務付けている。この条項の下では、例えば、電子メールでポーランド人についてのジョークを述べたり、ナチスによるユダヤ人大量虐殺が実際に行われたのか否かの質問をしただけでも犯罪となる可能性がある。
この追加条項について米司法省は、合衆国憲法修正第1条で表現の自由が保障されており、同条項に同意すれば違憲となると指摘した。この司法省の反対を受け、上院ではこの追加条項を批准の対象としていないが、条約を批准する他の国々は、追加条項も合わせて承認すると見られている。
しかし一部の人権擁護団体は依然として、上院で承認されようとしている同条約を批判している。
電子プライバシー情報センター(EPIC)は17日、FRCに送付した書簡の中で同条約について、「侵害的な捜査技術の開発を許す一方で、プライバシーや市民の自由を保護する有意義な手段を全く提供していない」ため、上院は批准すべきでない、と主張した。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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