米著作権法のあり方を大幅に変える新しい法案が間もなく上院に提出される。この法案が通過すれば、ファイル交換ネットワークだけでなく、違法目的で使用される恐れのある家電製品もすべて非合法とみなされることになる。
Induce Act(誘発法)と呼ばれる同法案には、「著作権違反を故意に誘発した者」は法的責任を問われると記されており、これが施行されればKazaaやMorpheusのようなファイル交換ネットワークが禁止されることになる。CNET News.comが確認した草案では、「誘発」とは「幇助、教唆、勧誘、助言、斡旋」と定義されており、これらの行為を行なった者は、民事制裁金や、場合によっては長期の懲役刑が科される可能性がある。
違法にコピーされた音楽、映画、ソフトウェアで溢れるPtoPネットワークの脅威が増す中、有力著作権者らはこれまでも対策法の制定に向けた取り組みを行なってきており、今回の法案はその最新の試みといえる。同法案は当初、米国時間17日にOrrin Hatch上院議員(ユタ州選出:共和党)が提出する予定だったが、上院司法委員会は17日の晩に法案作成が遅れたことを認めた。同法案の共同提案者と目されるBill Frist上院院内総務の代理人によると、Induce Actは来週中に提出されるという。
Induce Actはまだ一般には公開されていないが、同法案に対しては、規制によって新技術を排除することを目指すもので、著作権法の不当な拡大だ、との非難の声がすでに上がっている。
ウェイン州立大学教授で著作権法が専門のJessica Litmanは、「(議員らは)著作権侵害目的で使用される恐れのある技術の導入を、法的リスクを伴うものにしようとしている」と述べ、さらに「そのために(条文を)大ざっぱな表現にしている」と付け加えた。
Litmanによると、Induce Actの下では、ReplayTVのような製品やPtoPネットワーク、さらにごく基本的な機能を備えたビデオカセットレコーダ(VCR)さえも、著作権侵害に利用される恐れがあるという理由で非合法化される可能性があるという。また同教授は、MorpheusなどのPtoPクライアントを扱うTucowsのようなソフトダウンロードサイトも著作権侵害行為を「誘発」しているとして法的責任を問われる可能性があると警告する。
米レコード協会(RIAA)の広報担当Jonathan Lamyは、法案が正式に発表されるまでは本件についてコメントしない、と述べている。
「(Induce Actは)単純かつ極めて有害な法案だ」と語るのは、PtoPクライアントKazaaを配布している豪Sharman NetworksのロビイストPhil Korwinだ。「(Induce Actの下では)著作権を侵害する行為と侵害しない行為の2通りの使用法がある製品を製造し、実際その製品を使って侵害行為が行なわれていることを知っていれば、それだけで法的責任を問われることになる」(Korwin)
Induce Actに反対する人々は、同法案はソニーとUniversal City Studiosの間で争われた、いわゆるベータマックス訴訟で米最高裁が1984年に下した判決を事実上覆す可能性があると指摘する。5対4の小差で確定した同判決の中で、判決を支持した5人の裁判官は、VCRは「著作権侵害に当たらない多くの使い方がある」ため、同製品の販売は合法だと指摘した。しかし、裁判官らは、米議会には常に別の結果につながる可能性のある(VCRの販売が違法となる可能性のある)法律を制定する権限がある点を強調した。
米消費者電子機器協会(CEA)のコミュニケーション担当バイスプレジデントJeff Josephは、「少なくとも、(Induce Actが提出されれば)ベータマックス(の判決)は再検討されることになる」と語った。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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