PtoPネットワークを利用した映画や音楽ファイルなどの違法な交換が、依然としてエンターテイメント業界の注目を集めているが、そんななかでIT企業のなかには、PtoPとほとんど同じ手段を使って合法的なコンテンツ配信を行い、逆風に立ち向かっているところも出てきている。
映画業界の圧力でサービス閉鎖に追い込まれた初期のファイル交換ネットワークのなかに、Scourという企業があった。このScourのOBが設立したRed Swooshという会社は、これまで数年にわたり日の当たらない場所で活動を続けていた。だが、そのRed Swooshが米国時間9日、健全なコンテンツ配信ビジネスの素になるアイデアを手に、人々の前に姿を現した。
KontikiやGroove Networksといった有名なPtoP関連企業が、同技術のビジネスへの応用に焦点をあてているのに対し、Red Swooshではエンターテイメント業界や一般ユーザーにサービスを提供しようとしている。
Red SwooshのCEOは現在、BitTorrentという違法なファイル交換用アプリケーションのユーザーがつくる巨大なコミュニティに手を伸ばしているが、その背景には同社のこうした思惑もある。BitTorrentは、ビデオやソフトウェアを配布したり、ダウンロードしたりするユーザーの間で、爆発的に人気が高まったPtoP技術を利用するプログラムだ。
Red SwooshのCEO(最高経営責任者)Travis Kalanickは、そのエネルギーを利用したいという。同氏は、非商用目的で映画やゲームなどをつくる制作者や他のコンテンツ発信者に、同社のコンテンツ配信サービスを無料で提供している。
「BitTorrentと競合したくはない」とKalanickは述べ、さらに「同ソフトのユーザーがつくるコミュニティと関係をつくりたい。これは、何らかの取引を行うということだけでない。コミュニティに何かを提供しなくてはならない」と付け加えた。
PtoP技術の世界は、技術面での類似性にもかかわらず、Napsterの登場以来、異なる道を歩み続ける2つの陣営に分かれている。BitTorrentやKazaaのようなアンダーグラウンドのネットワークが栄える一方で、Red Swooshのような著作権保有者寄りの企業は最近、ようやくこれまでの努力が実を結ぶのを目にし始めたところだ。
Red SwooshやライバルのKontikiなどごく少数の企業は、PtoP技術を利用することで、コンテンツ配信者の負担する流通コストの多くを、主としてネットの使用帯域に対する課金という形で、彼らの顧客に転嫁できると述べている。ゲームやビデオなどの巨大なファイルを、多くの人々に配信する企業にとっては、この点が大きな利益となるというのが彼らの言い分だ。
Kazaaや今は亡きNapsterのような、もっとよく知られたファイル交換ネットワークと同様、特定のファイルに興味のあるユーザーはダウンロードしたファイルをハードディスクに保存しておく。KontikiやRed Swooshでは、ユーザーはPtoP企業の提供するファイル共有用アプリケーションもダウンロードし、これを使って、同じファイルに興味のあるユーザーにファイルをダウンロードさせる形をとる。これにより、オリジナルの配信元からではなく、各ユーザーからファイルがダウンロードされることになる。
Kontikiは現在、企業内での利用に向けたサービスの提供に比重をおいているが、同社のクライアントのなかには、ゲーム関連サイト「GameSpot」などもある(GameSpotはNews.comの発信元であるCNET Networksの所有するサイトの1つ)。同社はまた、GameSpotのライバルにあたるIGN Entertainmentや、ビデオ配信サイトのIFilmなどとも契約を交わしている。これら2社のコンテンツを中心に、Kontikiのネットワークは1日あたり最大で7テラバイトのデータをやりとりすることもあると、Kalanickは説明している。
IGNのCTO(最高技術責任者)Ken Kellerによると、Red Swooshのサービスを利用して同社はかなりの額に上る経費を節約しており、このなかには先月18テラバイトを上回るデータの配信にかかった約3万6000ドルの費用も含まれている。
だが、アナリストのなかには、エンターテイメント業界(におけるコンテンツの配信)でPtoP企業が大きな役割をはたせるかどうかについて、懐疑的な姿勢を崩していない者もいる。
「私が話をした大企業の人間は、こうした技術を採用したがっていないようだった。これらの技術が多くの不安材料を抱えているからだ」とGartnerのアナリスト、Lawrence Oransは述べている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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