欧州議会は来週、違法なコピー複製や音楽ファイル交換を行う者を取り締まれるように企業の権限を拡大する法案を採決することになっているが、この法案がさまざまな議論を巻き起こしている。
採決に諮られる「Intellectual Property Rights Enforcement Directive(知的財産権の行使に関する指令)」は、主にEU内での組織的な海賊行為や偽造活動を取り締まる法執行機関の権限強化を狙ったもの。だが、人権活動家グループは、この指令が大道芸や視覚障害者への朗読サービスのような、これまでは特に当り障りがないと考えられていた活動まで、法的処罰の対象にしてしまう恐れがあると反発している。
同指令は、2月9日の欧州議会本会議で採決される予定だったが、この採決は打開策を探るために延期された。業界関係者によれば、議会はEUに新規加盟国が参加する6月までに、同指令を承認したいと望んでいるという。
公民権擁護団体であるEDRI(European Digital Rights)によれば、欧州委員会が提示した妥協案は、指令の有効範囲を決定する際に、各加盟国へより多くの柔軟性を与えるものだという。たとえば、各加盟国は現在民事処罰の対象とされている犯罪に対する刑事処罰の適用に制限を課すことができる。
同指令は、さほど重大でない著作権侵害行為にまで適用範囲を拡大するよう考えられていたが、これは米国で実際に起こっているように、インターネットで何気なくファイルを交換しているユーザーを取り締まるために利用されるのではないか、と一部の活動家は心配している。
「指令の有効範囲は...営利目的で知的所有権が侵害された場合、あるいは侵害が権利所有者に重大な損害を与える場合だけに制限されるべきではない」と、法制および欧州市場委員会(Legal Affairs and the Internal Market:JURI)は、昨年11月に指令の草案を承認した際に述べていた。
活動団体のFFII(Foundation for a Free Information Infrastructure)は、現行のままでは、この指令は所有権を多く抱えている大手企業に強大な権限を与えるもので、弱小企業は不利な立場に立たされるとコメントした。
「FFIIは、はっきりと規定された安全措置がなければ、この指令が想像力に依存する各業界に、非常に攻撃的な、弁護士の支配する法的環境をもたらしかねないことを、非常に懸念している」と、欧州時間19日に声明のなかで述べている。
FFIIは、指令の有効範囲を当初の範囲に制限することを要求し、十分な議論を尽くすために、議決を3月まで延期すべきだと述べた。「この指令は、非常に重要で、間違いは許されない」(同団体)
EUでは、知的財産の取扱いに対して大きな変更を加えるべく、いくつかの議案が提出されたが、この指令をめぐっては、これまで熱のこもった議論が戦わされてきた。2001年に提出された著作権に関する指令「EUCD」は、何度も採決が延期された末に、昨年10月ようやく議会を通過した。また、欧州議会はソフトウェアに関する特許権に関する指令を、大きな修正を加えた後でやっと承認したが、この修正はコンピュータ科学者、エコノミスト、IT企業、ソフトウェア開発者など、さまざまな立場から抗議の声が上がった結果だった。あるIT業界団体は昨年11月、特許の保護能力を低下させたとして、この修正を非難していた。
著作権の執行に関する提案は、昨年1月に出されたものだが、これに対してInternational Federation of the Phonographic Industry (IFPI)や他の著作権保有者がつくるロビー団体は芳しくない反応を示し、もっと著作権保護を強化するよう求めていた。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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