米カリフォルニア州の連邦控訴裁判所で2日(米国時間)、オンラインファイル交換の将来を決する可能性のある裁判の、最初の審問が開始される。同裁判所ではエンターテインメント業界とファイル交換サービス企業を代理する弁護士が再び一堂に会する。
米連邦地裁判事は昨年春、GroksterやMorpheusといった分散型ファイル交換ツールの配布は合法であり、またファイル交換ネットワークの親会社はネットワーク上で行われた著作権侵害行為について、一切の法的責任を負わないとする判決を下したが、現在米第9巡回区控訴裁判所で、この下級審判決の再審が行われている。
レコード会社やハリウッドの映画スタジオは、かつてNapsterをはじめとするファイル交換企業を廃業に追い込む勝訴判決を勝ち取り、GroksterとMorpheusの親会社であるStreamcast Networksに対しても同様の判決が下ると期待していただけに、この下級審判決は彼らにとって予想外の敗訴判決だった。今回の控訴審で勝訴判決を守る立場にあるファイル交換サービス企業側は、この問題は彼らの製品、あるいはファイル交換業界全体よりもさらに大きな問題だと主張する。
Streamcast NetworksのCEO、Michael Weissは「これは著作権侵害の問題ではなく、技術革新を抑制し得るのは誰かという問題だ」と述べ、さらに「エンターテインメント業界には、最先端を行くのはどの技術かを決する際の悪しき前科がある」と語った。
控訴審では下級審と同様、ファイル交換サービス企業の製品を購入もしくは使用したユーザーの行った違法行為について、製品を提供した企業が責任を負うか否かについて、最終的に判断が下される。この問題はピア・ツー・ピア(PtoP)業界以外からも注目を集めている。
連邦判事のStephen Wilsonは昨年4月に下した判決の中で、ファイル交換ソフトと、かつてハリウッドが著作権侵害に当たるとして反対したビデオカセットレコーダーとを比較した。
Wilson判事は4月の判決の中で、「被告はソフトウェアの配布およびサポートを行っているにすぎず、それらのソフトを合法、違法のどちらの目的で使用するかの判断はユーザーが行うものだ」と述べ、さらに「GroksterとStreamCastは、家庭用のビデオレコーダーやコピー機を販売している企業と何ら変わらない。いずれの機器も、著作権侵害に利用される可能性がある上、事実、侵害行為にも利用されている」と指摘した。
これに対し、レコード業界とハリウッドの映画スタジオは、Wilsonの分析は誤っていると主張し、反論材料として、先に行われたNapster裁判の判決を挙げた。この裁判で判事は、法曹界で知られる「(VCRの)使用は実質的に著作権侵害に当らない」とする抗弁は、企業に自社製品が違法な目的で使用されているとの認識がある場合は適用されない、と指摘した。
全米レコード協会(RIAA)の弁護士(法務担当)、Matt Oppenheimは、Napster裁判でRIAAはネットワーク上で著作権侵害が行われているとの警告状を1万2000通送ったと語る。また現在行われている裁判でも、Grokster、Streamcast、さらにPtoPソフトKazaaを開発した、共同被告のSharman Networksに対し、合計800万通の警告を送ったという。なお、法律上の問題でSharman Networksとほかの2つの企業の裁判が分けられたため、Sharmanは今回の控訴審には参加しない。
米映画協会(MPAA)の弁護士David Kendallは「(GroksterとStreamcastの)経営手法はNapsterと同様で、3年前に裁判所がNapsterに対して下した判決は両社にも適用される」と述べ、さらに「唯一Napsterと異なる点は、両社のビジネスモデルが優れていたことだ。両社は他人のコンテンツで数百万ドルの利益を上げている」と語った。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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