全米レコード協会(RIAA)がファイル交換者を相手取り、261件の訴訟を起こすという前代未聞の行動に出た背景には、無秩序で深く根付いたオンライン文化を変えようという、同協会の野心的な目標がある。
RIAAが8日(米国時間)に261件の訴訟を起こしたことによって、法的展望は変化し、今後より多くの人々の意識変革を促す可能性が高い、と一部の業界アナリストたちは指摘している。
「1カ月前には、消費者は(ファイル交換に)全くリスクはないと考えていた」と語るのは、米調査会社のForrester Researchのアナリスト、Josh Bernoff。「みんなが、捕まる可能性が全くなければ、自分たちの行動を正当化するあらゆる理由を考え出す。しかし、いざ近所の家の人が連行され、罰金を支払わされる破目になった場合、自分たちの行動を正当化するための合理的理由付けを行うのは遥かに難しい」(Bernoff)。
こうした文化的な変化を起こすことが、音楽業界の最終的な目標だ。RIAAが起訴した261人のファイル交換者たちに課されるはずの罰金の額は、同協会がこの問題に費やしている裁判費用に比べれば、微々たるものだろう。RIAAが起こした一連の訴訟や、それらを取り上げた報道は、ファイル交換者たちを教育するため、あるいは彼らに恐怖を抱かせるためのキャンペーンの一環だとして、音楽業界に対し批判的な見方をする人もいる。
すでに、そのキャンペーンの効果は現われ始めているようだ。調査会社のNielsen/NetRatingsによると、5月以来KaZaAの利用が著しく減っているという。同社によると、KaZaAネットワークに複数回ログオンした人の人数は、5月末時点ではおよそ620万人だったのに対し、8月の最終週ではわずか430万人だった。
こうした数字の真偽はわからない。だが、法的展望は8日に決定的な変化を遂げた。ファイル交換を利用していたとされる12歳の少女とその両親および祖父母と、RIAAとの間に和解が成立したとマスコミで大々的に報じられたことで、一般家庭および全米中の学生寮にあるコンピュータで何が行われているのかについて、今後より詳しい調査が行われることはほぼ間違いない。
この変化の結果がどうなるかを予想するのはまだ次期尚早だ。しかし、RIAAの批判者たちは、同協会の一連の行動は音楽業界をさらなる窮地に追い込んだだけだ、と指摘する。
「今回の一連の行動で、音楽業界は信じられないほど莫大な額の散財をしている」と語るのは、電子フロンティア財団(EFF)の弁護士で、RIAAの法廷戦略を批判する最も著名な人物の1人、Fred von Lohmannだ。「6000万人の米国人を相手取って訴訟を起こすなどというビジネスモデルなどありえない」(Lohmann)。
いっぽう、RIAAは自らの行動を弁護する発言を行った。RIAAのCary Sherman会長は、「報復や罰を与えることが目標ではない」とし、さらに「単にPtoPネットワークのユーザーたちに、権利のない音楽の配布を止めさせることが目的だ」と語った。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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