IBMは米国時間3月17日、プロセッサコア同士が大容量ファイルを高速でやりとりできるようする新しいオプティカルスイッチを発表した。
このスイッチは、まだ試験段階にあるものだが、光電子工学の最新技術を採り入れている。現行のチップでは、内部の信号は微細な配線上を移動する電子によって伝えられる。光子(光の粒子)に比べると、電子は移動速度が遅く、熱も発する。光電子工学の研究者たちは、光ファイバー通信技術を小型化してチップ内で実現したいと考えている。それがうまく行けば、縮小されたコンポーネントはシリコンで安価に生産され、コンピューティングパフォーマンスを向上させる一方で、消費電力を削減するはずだ。IBMの試算によると、銅配線ではなく光技術で接続されたチップは、現行チップに比べて、電力消費が10分の1に、コア間のデータ伝送速度が100倍になるという。
このスイッチは、コア間のデータの受け渡しを指示するコンポーネントで、さまざまな波長の光を同時に処理することができ、1秒あたり1Tビットの総帯域幅を実現する可能性がある。これは、現在のチップが持つ入出力通信システムをはるかにしのぐ性能だ。帯域幅の数値が大きくなれば、コア間におけるデータの遅延(レイテンシ)を短縮できる。また、コンピュータのチップ組み込めるほど十分に小型で、1平方ミリメートル内にこのスイッチを2000個搭載できる。
IBMは、動作中のコンピュータ内部に模した高温の過酷な環境でもテストを行い、スイッチが性能を維持できることを確認したという。
IBMやIntelのような大手や、Primarionのような新興企業など、数多くの企業がこれまで8年もの年月を費やし、光工学を現実のものにするために、シリコンレーザーや導波管などさまざまなコンポーネントを使った実験を行ってきた。その中でも、IBMが考案したデバイスは特に有望視されており、光の速度を遅くしてデータのエンコードを容易にした点が売りだ。しかし、そうしたコンポーネントが実際にコンピュータに搭載されるまで、少なくとも数年は待つことになるだろう。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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