野村総合研究所(NRI)はこのほど、日本国内の有力企業のCIOや経営企画担当役員を対象に実施した「ユーザー企業のIT活用実態調査」の調査結果を発表。調査結果からは、新たな顧客価値とビジネス価値を創出するために、ITを活用した社内改革に取り組んでいる企業は多いにもかかわらず、あまり効果が出ていないと認識されていることが明らかになった。
2006年度のIT投資を前年度と比較すると、42.4%が「ほぼ同額」、37.6%が「増額した」と回答した。2007年度においては、44.2%の企業が増額を見込んでいる。
最重視または重視するIT活用テーマとしてあがっているのは、「業務効率化支援」(40.7%)と「業務プロセス標準化支援」(36.4%)。「事業・サービス創造支援」は16.0%で、2004年から減少傾向にあるという。実際の目的達成度から見ても、「業務効率化支援」と「業務プロセス標準化支援」は達成度が高い。しかし、「事業・サービス創造支援」はまだ実施さえしていない企業も半数近く存在している。
また、顧客価値とビジネス価値創出のためのITを活用した社内改革への取り組みについても調査を行った。「顧客関係管理」、「顧客参加型マーケティング」、「顧客に関する情報開示を反映した経営」、「業務プロセスの改革・改善」に、何らかの対策を講じている企業の割合は、それぞれ36.1%、26.9%、28.1%、91.9%。効果の見えやすい業務改善中心のIT活用が見受けられる。
NRIの研究創発センター主席コンサルタント淀川高喜氏は、「ビジネスイノベーションを駆動させるIT活用」と題したフォーラムの中で、今回の調査結果を説明している。
ビジネスイノベーションとは、商品・サービス、組織、業務プロセス、システムを抜本的に変えて、顧客に対する新しい価値を生み出し、ビジネス価値を高めることをいう。
「市場や顧客ニーズが多様化し、企業を取り巻く環境が大きく変化する中で、企業がIT活用による価値創出を成功させるためには、“関係資産”“ナレッジ資産”“業務プロセス資産”の3つの資産を進化させる改良プロセスを発展させていかなくてはならない」と淀川氏。
同氏は、IT活用によるイノベーションの重要性を説いたうえで「ITだけでイノベーションを起こすわけではない」と続ける。
「環境の激変を乗り越えて、企業が勝ち続けられる唯一の方法は、持続可能なビジネスイノベーションだ。それはITを下支えにして“関係資産”“ナレッジ資産”“業務プロセス資産”の進化のサイクルを回し、新たな商品・サービス、顧客価値、ビジネス価値を生み出し続けること。さらにイノベーションを成功に導くには戦略整合性、ガバナンス、手法、IT、組織分化、人材が重要であり経営者、事業部門、CIO・IT部門が三位一体で推進すべきだ」
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