米国では新学期が始まり、子供たちが学校に戻る時期を迎えた。そんな中、フィラデルフィアの一部の高校生が戻る先は、ふつうの学校ではなく、「未来」だ。
米国時間9月7日、ペンシルバニア州フィラデルフィア学区とMicrosoftが協力して建設した「School of the Future」(未来の学校)が開校し、初年度の新入生170名を迎えた。その多くはフィラデルフィア市内に住む低所得世帯の子供で、抽選によって選ばれた。
同校の生徒たちには、ワイヤレス接続機能を搭載したノートPCが1人1台支給され、学校で使うだけでなく自宅に持ち帰ることもできる。このノートPCは、学校が集中管理する学習および管理用のハイテクネットワークに接続されている。
公立学区の予算を使ってこうした高校が作られるのは、School of the Futureが初めてのケースだ。加えて、同校では、学校のすみずみにまで組み込まれたハイテクを活用して、市街地に住む家庭環境や技能の水準もさまざまな子供たちを教える。これに対し、従来のいわゆる「ハイテク高校」は、富裕層が住む地域に作られ、一定の学力水準が求められるチャータースクール(特別な認可を受けた公立学校)がほとんどだった。
フィラデルフィア学区の開発責任者であるEllen Savitz氏はこう語る。「これは大きな変化であり、教育の形を変える試みだ。テクノロジを簡単に利用できるようにすることで、生徒たちのやる気と能力を高める。今までと全く異なる教育の手法だ。互いに協力し支え合う文化を通じ、生徒たちの学力がさらに向上するといった成果を期待している」
デジタルデバイドが依然として米国の国民的な懸念となっているなかで、School of the Futureは開校した。米教育省が公表したデータによると、自宅や学校でインターネットにアクセスしている子供は、アフリカ系やヒスパニック系よりも白人の方がはるかに多いという。こうした格差は、貧しい家庭の子供にとっては不利な条件となりかねない。School of the Futureは、生徒の99%がアフリカ系であることから考えても、こうした格差の改善に貢献できる可能性がある。
この学校の特長の1つは、集中管理されたワイヤレスコンピュータシステムだ。このシステムは、コンピュータのユーザーが生徒か、保護者か、それとも教師なのかを判別し、その人に合った情報をノートPCに表示する。教師なら、ログインして授業計画や税金関係の書類などを入手できる。保護者なら、子供の学習の進み具合や学食の献立といった情報にアクセスできる。生徒なら、宿題をダウンロードしたり、課題図書を読んだり、新しい言葉を学習したり、抜き打ちテストに挑戦したりできる。
「すべての生徒が同じペースで学習を進めるわけではないため、(われわれが使用している)仮想授業支援ソフトウェアで、教師は子供たちの進度を把握する」とSavitz氏は述べ、「(抜き打ちテストで)5つの質問にすべて正解した子供には次の課題が出されるだろうし、不正解のあった子供にはさらに学習する時間が与えられる」と語った。
「テクノロジを使ったこのソリューションによって、それぞれの子供たちに合わせた学習アプローチを採れる」とSavitz氏は付け加えた。
また、生徒にはスマートカードが与えられ、(ダイヤル錠が不要な)デジタル式ロッカー、あるいは学食やインタラクティブ学習センターを利用する際にこのカードを使用する。カードには、子供たちが学食で注文した食事が記録されるため、食物、栄養、およびカロリーの摂取量に関するデータも提供可能になる。
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