サンフランシスコ発--世界第2位の携帯電話端末メーカーであるMotorolaにとって、Linuxは未来を担うソフトウェアだ。
「今後数年以内に、当社の携帯電話プラットフォームのうち50(%)から60%がLinuxベースとなるめどが立った」と、当地で開催中のLinuxWorld Conference and Expoにおいて、取材に答えたMotorolaのモバイルデバイスソフトウェア担当バイスプレジデント、Greg Besio氏は語った。
これまで、Motorolaが展開するLinuxベース携帯電話の大部分はアジアに出荷され、しかもハイエンドの「高機能端末」に限られていた。しかし同社は最近になって、より一般的なモデルの「ROKR E2」にもLinuxを搭載した。Besio氏はROKR E2をLinuxWorldでの講演の際に披露した。
同氏はさらに、Motorolaは100ドルから300ドルの価格帯に入る主力モデルを対象に、オープンソースのオペレーティングシステム(OS)であるLinuxの導入を推進しており、2007年には北米と欧州でもLinuxベースの携帯電話端末が広く出回り始めることになるだろうと語った。「われわれがLinuxの導入対象として考えているのは、この価格帯だ」と、Besio氏は述べた。
Besio氏によれば、3年前に出荷を開始して以来、イリノイ州シャンバーグに本社を構えるMotorolaが出荷したLinuxベースの携帯電話端末は500万台だという。500万台といえばかなりの数のように聞こえるかもしれないが、調査会社のiSuppliによると、2006年第2四半期だけでもMotorolaの総出荷数は5190万台を数えており、これと比較すると3年間で500万台は非常にわずかな数だ。
Linuxにとっても、携帯電話への採用は注目すべき成果と言える。従来、Linuxは複数のプロセッサや大容量のメモリを搭載し、常に電源につながれている高性能のサーバに主に使われてきたからだ。世界中の多くのプログラマーの手によって共同開発され、フリーで提供されてきたLinuxだが、Motorolaによると、携帯電話のシェアにおいてもMicrosoftのOSをしのぎ、2010年にはSymbian OSを追い越す勢いだという。
しかし、Linuxについて回る自由は、複雑化の要因でもある。Motorolaは、Linuxが細分化され、互換性のない複数のバージョンが市場に出回る事態を懸念していると、同社のChristy Wyatt氏は述べている。同氏は他社と共同でLinux「エコシステム」構築を目指すMotorolaの取り組みにおいて、リーダーを務める人物だ。
「われわれはこれまで、Javaのように、細分化が次第に技術に影響を与え、その成長を妨げる事態が起きうるという実例を見てきた。個人的な意見だが、Linuxが15種類に分かれるようなら、われわれはミスを犯したということになるだろう」(Wyatt氏)
こうした細分化を食い止めるために、Motorolaはパナソニック モバイルコミュニケーションズやNEC、サムスン電子などの端末メーカーと共同で「Open Platform Initiative」という取り組みを開始した。ここには通信事業者のNTTドコモとVodafoneも参加している。NTTドコモはアジアで、Vodafoneはヨーロッパで、それぞれ最大規模を誇る携帯電話事業者だ。
Besio氏によると、これらの企業による提携の目標の1つは、カーネルなどの下層部およびアプリケーションなどの上層部の両方において、Linuxソフトウェアのスタンダードモジュールの仕様を決定することだという。しかし、もう1つの目的は、他の企業に対し、このように企業の壁を越えたプログラミングの取り組みに重点を移すことを検討するべきだというメッセージを送ることにある。
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