National Institute for Standards and Technologies(NIST)の科学者らによると、テレポーテーション--つまり、物理的な運動を全くともなわずに、原子、あるいは少なくともその特性を別の場所に「転送」すること--は可能だという。
NISTの科学者らは、科学雑誌「Nature」に掲載された論文で、ベリリウム原子1個の量子状態(一連のアクティブな特性)を、別のベリリウム原子に転送することに成功したと発表した。量子状態とは、エネルギーや動き、磁場といった物理的な特徴を表すもの。
原子の持つ量子の性質を使えばデータ表現が可能になることから、テレポーテーションは原子ネットワークを構築する方法と考えられる。テレポーテーションを使えば、仮説的な量子コンピュータのあるゾーンから別のゾーンに、データを瞬時に移動できるようになるだろう。
NISTのテレポーテーション実験では、物理的な運動は全く生じずに、データが転送される。このような物理運動をともなわない転送は、未来のコンピュータの計算スピード向上につながるだろう。このようなコンピュータの計算処理速度は「原子が動くよりも速い」とNISTの広報担当Laura Ostは述べている。
NISTの実験では、トラップと呼ばれる、金の電子とレーザー光で満たされた閉領域に3つの原子を入れる。レーザー光は原子を活性化させ、スピンと呼ばれる量子特性を変更するのに用いられる。第1と第2の原子を、「もつれ」と呼ばれる特有の形で絡み合わせる。そしてこの関係を、第1と第3の原子のもつれにコピーする。すると第1と第3の原子のもつれは、第1と第2の原子のもつれと測定上全く同一になるので、第3の原子は第2の原子の性質を帯びる、という仕組みだ。
NISTの物理学者で、この研究のリーダーであるDavid Winelandは声明を発表し、「情報共有や情報処理の目的でキュービット(デジタルビットの量子表現)を瞬時に動かすのは難しい。しかし、われわれが報告したテレポーテーションを用いれば、論理演算ははるかに高速化される可能性がある」と述べた。
科学者は、原子の正確な量子特性を判断することはできない。しかし原子の相対的な特性を調べることにより、ある原子の特徴が転送された--つまり、その原子がテレポーテーションされたことを確認するのは可能だ。
「説明するのも理解するのも非常に難しいが、一般的な概念としては、ここには物理的ではなく数学的なリンクがあるということだ」(Ost)
コンピューティングにおける0と1を表現するのに原子や分子を利用する方法は、研究レベルではますます一般的になっている。4月にはイスラエルの科学者らが、DNAやRNAらせん構造の4種のアミノ基のパターンを辿り有害な細胞を特定する、いわゆるDNAコンピュータの開発に成功したと発表している。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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