32/64ビットの互換性をもつAMDのOpteronが登場して以来、x86市場は激変している。各サーバベンダーが積極的にOpteronの採用を進めており、この流れに影響を受けたのか、今年2月にはIntelがXeonに64ビット拡張機能を搭載すると発表した。同じく2月には、これまでIntelと共同でItaniumチップの開発を行うなど、Intelとの結びつきが強いとされていたHewlett-PackardまでがOpteronを採用すると発表している。
激動するx86市場で、昨年11月にAMDとの戦略的提携を大々的に発表したのはサン・マイクロシステムズだ。「この市場は思った以上の勢いで変化している」と、同社プロダクト&ソリューション・マーケティング本部本部長の山本恭典氏。この変化の激しい市場におけるサンの64ビットコンピューティング戦略はいかなるものなのか。18日に開催されたプレスセミナーにてサンは、AMDとの良好な関係をアピールするとともに、提携にともなうロードマップや製品の位置づけなどを説明した。
サン・マイクロシステムズ プロダクト&ソリューション・マーケティング本部本部長、山本恭典氏 |
両社の提携内容は、技術面からマーケティング活動に至るまで幅広いものだ。両社は、Solaris OSとJava Enterprise SystemをOpteronに向け最適化することや、Opteronをベースとした4ウェイ以上のサーバ製品の展開、HyperTransportテクノロジーの実装などで協力している。また、共同でSolaris向けアプリケーションを開発し、移植を行うISVに対して支援プログラムを展開するとしている。
提携の成果としてサンは、2月にOpteron搭載の2ウェイサーバを発表したばかりだが、2004年第2四半期には4ウェイシステムを発表する予定だ。同じく第2四半期に、日本のサン・マイクロシステムズ本社内に共同のアプリケーション検証センターが開設される予定。また、2004年後半にはOpteron対応の64ビット版Solarisがリリースされる予定で、将来的にはOpteron搭載の8ウェイシステムやブレード製品、ワークステーションなどもリリース予定だとしている。
AMDとの提携以前は、64ビットコンピューティングにおいてはSPARCのみを販売していくとしていたサンだが、Opteronを採用するにあたって同社はSPARCとOpteronの位置づけの違いを明確に示している。同社プロダクト&ソリューション マーケティング本部、ハードウェア製品事業部長の野瀬昭良氏は、「SPARCはマルチスレッド環境でのスループットを重視したものとなり、Opteronなどのx86プロセッサはシングルスレッドでのパフォーマンスを重視したものだ」と説明する。マルチスレッド処理時のスループットが重要となるのは、たとえばICタグなどの普及でひとつひとつの計算量は少なくとも、膨大な数の計算をこなさなくてはならないなど、計算の数が増えることが予想されるためだ。現在サンが提供するUltraSPARC IVは2スレッドの同時処理が可能だが、2005年以降にサンが発表する予定の次世代プロセッサNiagara(コード名)はマルチスレッド処理をより重視したものとなり、32スレッドの同時処理が可能となる。
これまで32ビットのみの対応であったIntelのXeonが64ビット対応となることで、Xeonは「AMD互換」とも取れるようになる。そうなるとOpteronとXeonの差もなくなるわけだが、今後サンが64ビット対応となるXeonを採用することはあるのだろうか(現在サンでは、32ビット対応のXeon搭載サーバを出荷している)。山本氏は、Intelが64ビットコンピューティング構想を打ち出してからItanium2をリリースするまでにかなりの遅れがあったことを指摘したうえで、「Xeonも実際に64ビット対応となるまでにかなりの時間がかかるだろう」と述べる。さらに、サンとしては技術的に一番よいものを選択するという立場なため、Intel製に乗り換える可能性がゼロだと言い切ることはできないとしながらも、「AMDとサンの結びつきは非常に強いものだ。技術面でも共同開発を行うなどしており、この関係を考えると(乗り換えの)可能性はかなり薄いだろう」と述べた。
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