東京証券取引所は1月24日、市場の混乱を回避する観点からライブドア株式についてさらに異例の措置を取ることを発表した。
1月25日以降当分の間午前立会を行わず、立会時間を午後1時30分から午後3時とする。取引所における注文受付開始は通常どおり午前8時からとするが、午後1時30分までの間システム上は売買停止と表示される。つまり、1日の内で午後1時30から3時までの1時間半だけに投資家の売買機会を限定したわけだ。
また、ToSTNeT取引については、通常どおり実施する。なお、始値成立後の売買・注文動向によっては、売買を停止する場合がある。
東証では、全銘柄の取引に対して1月19日から特別措置を実施している。この措置は、全銘柄の午後立会開始時刻の延刻(午後1時開始)と、注文件数850万件および約定件数450万件に係る売買停止基準だが、これも当面続けられる(関連記事)。
こうした措置について東証は、「ライブドアは上場単位数ベースで東証の全上場銘柄の約45%を占めており、投資単価も非常に小さい金額であることから、ストップ配分以外での約定が成立した場合には、その後の取引において大量の件数の注文発注、売買が行われる可能性が非常に高い」とし、大量の取引によって再び全銘柄が売買停止に陥ることを恐れての措置といえよう。
東証や大阪証券取引所など全国5取引所に流通している全株式数に占めるライブドア株の割合は、2005年6月16日に公表された「2004年度株式分布状況調査」で直近数値がわかる。以下の表のとおり、取引所での売買単位となる単元株(各銘柄ごとに決められている最低売買単位で、一定株数を1単元とする。ライブドアは1株で1単元)ベースでは、2003年度に0.05%だったが、2004年度には33.98%に一気に跳ね上がっている。先ほどの東証の説明では、ライブドアは10億単元を上回り、この比率が東証の上場銘柄に限れば約45%にものぼっているというわけだ。
全取引所の流通株式(単元株ベース)に占めるライブドア株の比率
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調査対象企業数と期間:2005年3月末現在において、東京、大阪、名古屋、福岡、札幌の5証券取引所に上場している内国上場会社2800社のうち、5取引所への新規上場日以降2005年3月31日までに決算期末日が到来していないため、上場後の株主の状況を把握することができない25社を除く2775社の2004年度(2004年4月1日〜2005年3月31日)中に到来した最終決算期末日現在の上場普通株式。ライブドアの場合、調査対象決算期は2003年10月から2004年9月
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この比率が跳ね上がったのは、調査対象決算期に2度の大幅株式分割をしたためだ。2003年6月25日(権利落ち日)に1株を10株に、2003年12月25日(権利落ち日、株券の受け渡しは2004年2月2日)に1株を100株に分割している。つまり、株式数だけをみればこの2回の分割で1000倍に増加している(株価はそのぶん調整されるので単純に金額が増えるわけではない)。
このように、ライブドアの売買が取引市場全体に与える影響はたしかに大きい。また、ストップ配分とは、売り買いのバランスが崩れてストップ高やストップ安の制限値段でも終値が付かない場合に、注文数に応じて売買を配分して成立させる(株価を付ける)方法のことだ。各証券会社から発注される数量に比例して配分することから比例配分ともいわれる。ある意味強制的に株価を成立させる方法ともいえる。
ライブドアの1単元は1株なので、2006年1月24日の終値からすれば1株176円で売買注文が出せる。東証がしきりに「注文の発注に際しては、システム発注を含めて可能な限り集約するように」と投資家にお願いしているのはこのためである。小額で小口の売買ばかりが発注されると、発注件数が膨れあがり、東証のシステムをすぐに圧迫してしまう。そして、強制的に株価を成立させるストップ配分以外で、株価が付けば、それがさらに大量な売買を呼び込む恐れがあるというわけだ。
東証はさらに1月24日開催した取締役会において、大量の取引に対応できるようにシステムを整備するため、東証初となるIT戦略全体を統括する執行役員(最高情報責任者、CIO)を選任した。NTTデータ・フォースの代表取締役社長を務める鈴木義伯氏が2月1日付で就任する予定だ。また、これに伴い2月1日から経営企画部内にCIOの管轄するIT企画室を新設する。鈴木氏は1949年1月19日生まれの57歳。1972年4月に日本電信電話公社入社し、1988年1月に日本電信電話の金融システム事業部担当部長に就任して以来、金融システムに携わってきた。2005年6月にNTTデータ・フォース代表取締役社長に就任。
このほか、東証は3年間の「新中期経営計画(2006年度〜2008年度)の策定に関する基本方針」をまとめ、3月をめどに具体的な敬作を策定する。基本方針では、「高い信頼性と豊かな流動性の確保という市場開設者に課せられた基本命題に立ち戻り、自らを改革することによって取引所の信頼の回復と向上に努める」として、3つの柱を挙げた。
1つは、システム障害や処理能力の不足という一連のシステムに係る問題を抜本的に改善するため、次世代システムの構想を確立し、開発に着手すること。もう1つは、ディスクロージャー制度の根幹を揺るがす企業不祥事や会計監査不信などが相次いで表面化するとともに、敵対的買収防衛策の導入が進むなかにあって、上場会社のコーポレートガバナンスの充実など自主規制機能の強化や体制を整備すること。さらに3つめは、国際的な市場間取引の競争力を強化すること。この中で、次世代システムの開発には500億円程度を投資する見込みだ。
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