石油会社および軍事関連請負業者向けにコンピュータを製造するMercury Computer Systemsは、将来の同社製コンピュータにCellプロセッサを採用する予定だと発表した。同社の決定は、IBMにとって、Cellプロセッサの普及における第一歩を記すことになる。
IBMとの間で締結された複数年契約の下、Mercuryは、さまざまな業界向けアプリケーションを稼働するCellチップベースのコンピュータを製造する。業界向けアプリケーションの例としては、地震データの処理や、MRIデータからの画像生成などが挙げられる。
「PlayStationと、まったく同じチップを使う」とMercuryの最高技術責任者(CTO)Craig Lundは述べる。ただし、Mercuryのコンピュータ上とPlayStationでは、I/O構造など複数の点で大きな違いがある。
Cellは、Powerプロセッサベースのプライマリコア1基と、それを補助する複数の専用コアで構成されている。同チップは、IBM、ソニー、東芝によって開発された。ソニーはPlayStation3で、東芝はテレビで、それぞれCellを採用する予定だ。
IBM、ソニー、東芝の各社は、同チップを自社製品に搭載するだけでなく、サードパーティに販売したいと考えている。しかし、この取り組みは、半導体業界特有の性質だけでなく、同チップのサイズや消費電力により、困難なものとなっている。
Mercury(年間売上高約2億5000万ドル)は、決して世界最大規模のコンピュータメーカーではない。しかし、Mercuryは、ハイエンド分野で特殊な需要を掘り起こしている。Mercuryでは、通常のPCやワークステーションに比べ効率よく高速にタスクを処理できるコンピュータを、カスタムメイドのコンピュータより低価格で製造している。Mercuryは、何年も連続で利益をあげている。
「われわれが狙っているのは、カスタム品と既製品の間の市場だ」とLundは述べる。「世の中には非常に多くのアルゴリズムが存在する。アルゴリズムによっては、医療画像をより鮮明にできるものもある。しかし、画像を鮮明にできるからといって、病院が採用してくれるとは限らない」(Lund)
またMercuryは、通常と異なる環境での使用に耐えられるシステムも製造している。たとえば、航空機/船舶/車両への搭載を目的に設計された「PowerStream 7000」は、テラフロップ級の処理性能を持ち、軍事関係の顧客に販売される。
「市場と完全にマッチしている」とMicroprocessor Reportの編集長Kevin Krewellは述べる。「Cellプロセッサの設計は、まるで、画像処理システムとしての動作を意図しているかのようだ」(Krewell)
Mercuryでは、Powerアーキテクチャのチップを採用している機種以外にも、デジタル信号プロセッサやIntelチップを採用しているコンピュータも製造している。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」