Red Hatが2月に発売した同社のプレミアムLinux製品の最新バージョンは、16カ月をかけて開発されたもので、その価格はコンピュータ1台あたり最大で年間2499ドルもする。
ところが、あるプログラマーのグループは、わずか2週間にも満たない期間で同ソフトウェアのクローン版を開発し、それを無償でリリースしてしまった。だが、この動きはRed Hatにとって損にも得にもなるようだ。
このクローンソフトは、CentOS(Community Enterprise Operating System)というプロジェクトから生まれたものだが、「Red Hatリビルダー」と呼ばれるこのようなプロジェクトがすでに複数存在している。Red Hatは2003年、サポート付き認定製品の無償配布を中止するとの判断を下したが、これを受けて生まれたのがこれらのリビルダーで、CentOSのほかにも、Lineox、White Box Linux、Tao Linux、X/OS Linux、Scientific Linuxといったプロジェクトが、Red HatのリリースしたRed Hat Enterprise Linux(RHEL)のソースコードコンポーネントを利用してクローンソフトをリビルドしている。
これらのクローンソフトは、Red Hatにとってメリットにもデメリットにもなる。同社は、Linux OSの最大手ベンダーという立場を利用して利益を上げようと、積極的な価格設定でサービスを提供している。
各リビルダーは、Red Hatのソフトウェア開発に携わるボランティアプログラマの力を借りながら、同社のソフトウェアやそれに付随するサポートの見込み客を奪っている。その一方で、これらのリビルダーは新たなユーザー層にRed Hatのソフトウェアを普及させることで、同社の市場支配に力を貸している。そうしたユーザー層のなかからは、いずれRed Hatのサービスや信頼性には価格に見合うだけの価値があると判断するところも出てくるかもしれない。
しかし、多くのRed Hatクローンユーザーが、しばらくの間はオリジナルを採用しそうにないないことも明らかだ。
コロラド州デンバー在住のCollins Richeyは、「Linuxはタダで使っているし、Red Hatのような定期契約サポートは全く必要としていない」と語っている。同氏はLinuxファンで、自分のPCにはCentOSを使い、仕事用のマシンとの互換性を確保している。「限定的な試験プロジェクトとして、職場でCentOSを推薦することも検討している」(Richey)
この件に関して、Red Hatは楽観的な見方をしており、同社広報担当のLeigh Dayはクローンについて、新しい顧客を獲得する可能性があるため「好ましい」としている。
「潜在顧客は、未サポートあるいは不適切なサポートのバージョンを試すことで、Linuxの価値を理解する手掛かりがつかめる。そして、ゆくゆくは自社のビジネスをサポートできる会社に助けを求めるようになる」(Day)
Red Hatは2月に、CentOSに対して、商標登録してあるRed Hatの名前とロゴを外すように要求した。
しかし、Red Hatが本気でリビルダーの活動を妨害したいと考えた場合、同社がソースRPMファイルと呼ばれる便利なパッケージの形で自社製品のソースコードをリリースする現在の慣行を止める可能性もある。
「Red Hatは、とても簡単にクローンをつくれるようにしてるのだから、どのリビルダーからも感謝されるべきだ」というのはGreg Kurtzer。同氏はCentOSプロジェクトを運営しているCaos Foundationの創設者だ。「Red Hatが金を儲けようとしているからといって、彼らを責めるようなことはしない」(Kurtzer)
Red Hatでは引き続きソースRPMファイルをリリースしていくという。「現在やっていることを、今後も長い期間にわたって続けていくことになる」とDayは述べている。
代替となる選択肢が出ているにもかかわらず、Red Hatのサブスクリプション販売数は着実に増加を続けており、2003年11月末締めの四半期には3万3000件だったものが、その1年後には13万2000件となった。さらに、2004年8月末締めの四半期には14万4000件を記録した。同社は3月31日に直近の四半期の売上数値を発表すると見られている。
ただし、Linuxベンダーが設定できる価格には上限があるとの見方もある。「われわれがLinuxを選んだ本当の理由は、価格面の優位さだ」というのは、Eastek International(ニューヨーク州バッファロー)のBrian Trudeauで、同氏はCentOSのユーザーだ。「Windowsと同じくらいコストがかかるのであれば、Red Hat(のLinux)を選ぶ理由もない」(Trudeau)
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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