世界最速のスーパーコンピュータとして2年半トップの座に君臨したNECの地球シミュレータがついに首位の座を明け渡した。今回正式に新しい王座に就いたのはIBMのBlue Gene/Lだ。
IBMはここ数年、業務用コンピュータ分野から高性能技術コンピューティング分野へと自社の専門知識を拡大する取り組みを続けてきているが、今回のBlue Gene/Lによる王位継承はこの取り組みを反映したものだ。年2回アップデートされるTop500リストの最新版では、IBMのシステムが216台ランクインしている。これらのシステムの処理能力を合計すると、ランクインしたシステム全体の49.4%にもなる。
同社の勢いはLinuxの台頭という形でも現れている。Blue Gene/Lにも採用されているこのオープンソースOSは、IBMが最も強力に支持しているものだ。また今回新たに第2位となったSilicon GraphicsのColumbiaもLinuxを採用している。
Blue Gene/Lは毎秒70.7テラフロップ(70兆7000億回)の演算処理が可能だが、この性能は地球シミュレータの35.9テラフロップに対してほぼ2倍にあたる。また、Columbiaの性能も予想通り51.9テラフロップとなった。また、第4位には20.5テラフロップを記録したIBMのMareNostrumという新システムが入った。
このTop500リストは、ドイツ・マンハイム大学のHans Meuer、ローレンスバークレイ国立研究所のErich StrohmaierおよびHorst Simon、そしてテネシー州立大学のJack Dongarraによって集計されている。同ランキングは、ペンシルバニア州ピッツバーグで開催中のスーパーコンピューティング関連のイベント「SC2004」で米国時間8日に公表された。同ランキングではコンピュータの採点に、Linpackベンチマークが利用されている。このベンチマークは便利な反面、実際の利用環境を反映した計測に不備があることはリストの集計者らも認めている。
トップエンドのスーパーコンピュータは数千基ものプロセッサを搭載しており、メガワット単位の電力を消費し、ビルのワンフロアを占有する。しかし、新奇あるいは特殊な計算処理技術が基盤になるケースは減少傾向にある。今回ランクインした500台のシステムのうち、236台は市販サーバの大部分と同じIntel Xeonプロセッサを採用している。ちなみに6月に発表されたリストでは226台が同プロセッサを採用していた。もう1つの主流チップで、Columbiaにも採用されているIntel Itanium搭載システムは、同時期に61台から87台へと増加した。
サーバチップとしてやはり一般的なAdvanced Micro Devices(AMD)のOpteronについては、6月のランキングでは同チップを採用したシステムが32台ランクインしていたが、今回は30台へと減少した。また、IBMのPowerプロセッサ搭載システムも同様に、6月の75台から今回は62台へと減少している。
これらの一般的なコンポーネントを集めて構築されたクラスタ型のスーパーコンピュータは、高速ネットワーク経由でメッセージのやり取りや相互のメモリ共有を行っている。今回のランキングでは、こうしたクラスタシステムが296台ランクインしている。
今回のランキングでも、IBMとHPが圧倒的な強さを見せた。IBMのシステムは6月の224台から今回は216台へと減少した。それに対し、HPのシステムは6月の140台から今回は173台に増加している。
スーパーコンピュータ市場全体のなかで、IBMのシェアはますます大きくなっており、首位のHPのシェアに近づきつつある。調査会社のIDCによると、IBMの市場シェアは2002年の28.2%から2003年には30.2%へと増加し、売上高も16億2000万ドルとなった。これに対し、2003年に17億9000万ドルの売上があったHPのシェアは33.5%と、前年の33.6%から僅かに低下している。
これまで長くランクインしてきた日本勢に加え、今回は他のアジア勢の数も増えている。上位500位のうち、日本製システムは30台、また他のアジア各国のシステムは57台あり、このうち中国からは17台がランクインしている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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