Adobe Systems(本社:カリフォルニア州サンノゼ)は、PhotoshopやAcrobat Readerのようなデスクトップ用ソフトウェアを販売しているが、その同社がデスクトップLinuxへの関与を深める取り組みをひそかに開始した。
Adobeは、デスクトップコンピュータでのLinux普及を進める取り組みに関しては、これまでほとんど傍観する態度を続けてきた。この分野はMicrosoft Windowsが大多数を抑えている。だが、CNET News.comが入手した情報によると、同社は現在、著名なLinuxの業界団体への参加、Linux改善への取り組み、自社の主導するオープンソース開発プロジェクトの計画などを通じて、これまでより積極的な役割を担おうとしているという。
同社は先頃、2つのポスト--Linux市場の開発を担当するディレクターと、オープンソースプロジェクトを主導するシニア・コンピュータ・サイエンティスト--について、求人募集をかけていたが、この募集の内容からは、同社の意図が垣間見える。
この求人募集には、「(同社が)Linuxおよびオープンソースデスクトップ市場におけるAdobeの戦略を特定/評価し、またデスクトップ環境としてのLinux改良に役立つプロジェクトを見極める」ことを任務とするLinux市場開発責任者を探していると書かれていた。そして、採用された責任者は、「主要なLinuxディストリビューター各社やパートナー各社と、強力な関係を築くことも求められる」という。
また、シニア・コンピュータ・サイエンティストについては、「Adobeが主導する2つ以上のオープンソースプロジェクトについて、その管理や設計を担当する」ことになるという。オープンソースプロジェクトの主催は、IBMやSun Microsystems、さらにはMicrosoftなど、協調プログラミングの理念を試し、願わくばそれを活用したいと考える各社にとって、ひとつの通過儀礼となっている。
AdobeはOpen Source Development Labs(OSDL)という業界団体にも参加した。この団体には、Linuxの考案者であり、開発リーダーを務めるLinus Torvaldsが在籍している。Adobeの事情に詳しい情報筋によると、同社はOSDLでデスクトップLinux作業グループのメンバーになっているという。
同社はOSDLへの加入を正式に認めたが、Linux用デスクトップソフトウェアの計画についてはコメントしていない。しかし、AdobeのPam Deziel(製品マーケティング担当ディレクター)によると、同社は主力グラフィックスソフトのPhotoshopやIllustratorに関して、現時点ではLinux版発売に踏み切るだけの顧客がいない、と考えているという。
「技術の成熟度で見ると、(Linuxという)プラットフォームは十分堅牢だ。しかし、ビジネスの面については、まだ十分な市場規模に達していないと思われる」(Deziel)
Linuxは、プログラミングやプロセッサの設計といった一部のワークステーション用アプリケーションでは定着した。だが、グラフィックスソフトのベンダーにとっては、Linux市場への参入は良いアイデアとは言えないと、Jupiterのアナリスト、Michael Gartenbergは述べている。
「これらのアプリケーションを(Linux向けに)販売するのは非常に難しいと思う。ローエンドには同様の機能を持つ無償アプリがあふれており、またハイエンドの市場規模は非常に小さいからだ。1つのアプリケーションに500〜800ドルも払える人なら、Mac OSやWindowsでも何の問題もないはずだ」(Gartenberg)
Dezielによると、それでも顧客が関心を示す分野が1つあるという。それは、Portable Document Format(PDF)ファイルの閲覧に利用するLinux版Acrobat Readerの新バージョンだ。同氏は、「Linux版Acrobat Readerのバージョンを5.0からアップデートしたいと考えており、現在その作業を進めているところだ」と語っている。ちなみに、Adobeでは現在Windowsユーザーにはバージョン6.0.1を提供している。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」