新興のコプロセッサ市場でのニッチの確保を狙う競争が激化するなか、チップ設計会社のClearSpeedは、1つの半導体に96個のコンピューティングコアを搭載することに成功した。
まもなく発表になる同社の「Avebury」(開発コード名)というチップには、特定の数学計算用に調整された96基の独立した内部ユニットが含まれている。Aveburyは、たとえば1つのたんぱく質と他の何千ものたんぱく質との間に生じる相互作用の研究や、資産のポートフォリオに組み込む株式の比率をわずかに変えると、その後数年間にわたって資産状況にどのような影響があるかを予測する金融分析などで必要な、繰り返しが多く、計算負荷の高い作業をこなす。
「(Aveburyは)ローカルな高性能コンピューティングを実現するので、技術に長けたユーザーなら小規模なクラスタやデスクトップ上で作業を完了できるようになる」とClearSpeedのテクニカルマーケティングディレクター、David Hoffは述べている。ClearSpeedはカリフォルニア州ロスガトスと英国ブリストルにオフィスを構えている。
コンピュータのメインプロセッサに代わって特定の種類の数学計算を処理するチップは、何十年も前にIntelなどの企業がコスト削減のためメインのマイクロプロセッサに統合してしまったが、ここへ来て再び大きなビジネスになりつつある。
理化学研究所は今夏、1秒間に1000兆回の演算が行なえる「MDGrape 3」チップの詳細を発表した。この演算スピードは現在のスーパーコンピュータ以上だが、MDGrape 3には特定の機能しか扱えないという制約がある。
一方Azul Systemsは最近、4〜16基のプロセッシングコアを組み合わせて、Javaアプリケーションの高速化を実現するハードウェアを発表している。
コプロセッサの導入を促しているのは、消費電力の問題だ。汎用のハイエンドマイクロプロセッサは3GHz前後で稼動するが、その結果として、これらのチップでは家庭用電球よりも多い100ワット以上の電力が必要となることがあり、大量の熱を放出してしまう。
コプロセッサは低速だが、多数のタスクを同時処理することによってエネルギーを節約している。たとえば、クロックスピードが250MHzのAveburyは、5ワットの電力で問題なく動作する。それでも、96個のプロセッサコアを組み合わせることで、1秒間に500億回の浮動小数点演算(小数を含む数学計算)を実行できる。それに対して、現在市販されている通常のマイクロプロセッサには、3つの浮動小数点ユニットしか含まれておらず、計算スピードは概ね1秒間に100億回未満となっている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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