世の中には目の不自由な人に視覚を与えようと努める人がいる。一方、Canesta(本社:カリフォルニア州サンノゼ)という会社では、車や自動ドアに視覚を持たせようとしている。
赤外線を利用したバーチャルキーボードで有名なこのベンチャー企業は、米国時間10日に、他のメーカーが製品に機械の目を組み込むための開発キットを発表する。このキットを利用して、今回の開発キットのベースとなっているCanestaのEquinoxチップを組み込んだ工場用ロボットは、たとえば、周囲にある物体の大きさや形を認識し、最初に拾い上げるべきものはどれかを判断する、といったことができるようになる。
同様に、自動ドアが目の前にある物体を人や犬であると判別したり、その人物がこれからお店に入ろうとしているのか、あるいは単に通過中に誤ってゴム製マットを踏んだだけなのかを判断できると、Canestaの開発部門でバイスプレジデントを務めるJim Spareは説明する。不必要なドアの開閉を減らせれば、電気代の削減やセキュリティの向上につながる。
「(自社のEquinoxチップは)人と葉っぱ、あるいは人とリスといったものの形状の違いを認識できる」(Spare)
センサー市場は現在成長を続けているが、同社の技術もそうしたものの1つにあたる。センサー技術を活用すれば、動物の行動やビル内部の活動状況、戦場での動きなど、機器がより詳細に情報収集を行えるようになるといわれている。
自動車メーカーのVolvoと半導体メーカーのInfineonでは、自動車の死角を映し出したり、ドライバーがすでに他のクルマのいる車線に移動するのを防ぐのに役立つバックミラーなど、車の安全性に関する技術を普及を目指している。
ドライバーが疲れていないか、あるいは酔っていないかどうかを識別するアイ・トラッキング・システムは、トラック業界向けに来年にも登場する見込みであると、Delphiで上級エンジニアディレクターを務めるRichard Lindは述べている。
「もし(運転手が)床に何かを落としたり、あるいは睡魔を感じている状態なら、まばたきの頻度を計測して、その状態を割り出せる」(Lind)
だが批判的な人々の間では、この種の技術が将来的に人々を常に監視し続けることになり、非常に大きなプライバシーに対する懸念となると指摘している。
Equinoxチップは、簡単にいうと、4096ピクセルのイメージセンサーと赤外線センサーとを組み合わせて利用している。イメージセンサーはその場の情景を2次元の地図として把握し、また赤外線センサーは対象物の奥行きや距離を計測する。標準的なキーボードをレーザー光によるイメージで表現したバーチャル・キーボードの場合は、イメージセンサーがキーボードのレイアウト上にあるそれぞれの指の位置に関するデータを割り出す。同時に赤外線技術によって、個々の指が上がっている状態なのか、あるいは下がっている状態なのかを判別する。そうして、中央のプロセッサがそれらの情報を関連づけ、指が(仮想の)キーを叩いた状態なのか、あるいは単に待機状態にあるのかを判断する仕組みになっている。
産業用ロボットのメーカーでは、現在でも赤外線やイメージセンサーを使った技術を導入できるが、しかしコストが高くつき、また2種類のチップを使わなければならない。これに対し、Canestaではより簡単かつ低コストでこうした技術を導入できるようになると考えている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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