ワシントン州レドモンド発--Microsoftの経営幹部はCNET News.comに対し、Longhornのベータ版配布が来年に延期になる可能性が高いと語った。この遅れの原因は、同社がWindows XPのセキュリティ強化に追われていることにあるという。
Microsoftはこれまで、Windowsの大型アップデートとなるLonghornのベータ版出荷を今年夏に予定していた。だが、MicrosoftプラットフォームグループのバイスプレジデントJim Allchinは、同社がセキュリティ強化のために、Longhornの開発に携わっていた多数のスタッフを、現行版Windowsのアップデート版開発部隊に配置転換したと語った。
「Longhornベータ版を夏までに配付する」という同社が自ら設定した期限を守れるのかと問われたAllchinは、「今年中には間に合わないと思う」と答えた。同氏はまた、開発期間短縮のため、Longhornで予定されていた機能のうち重要度の低いものについては、Windowsの将来のリリースに先送りすることも明かした。「時期的な点からいっても、いま解決策が見えていないものは、同製品への実装中止を考えるべきだと思う」(Allchin)
セキュリティに関する顧客からの圧力が高まっていることもあり、同社はWindowsのセキュリティ対策を最優先課題としている。Allchinによると、今年中のリリースが見込まれているWindows XPやWindows Server 2003のアップデート版(もしくはサービスパック)では、 新しいセキュリティ機能が登場する予定だという。Microsoftの予定では、Windows XP Service Pack 2(SP2)が今年夏までに、そしてWindows Server 2003 Service Pack 1が今年後半に出荷される。さらに、Longhorn登場前にWindowsの暫定版がリリースされるとの憶測が流れているようだが、そうした計画は一切ない、とAllchinは付け加えた。同氏によると、登場予定のXP Reloadedと呼ばれるWindowsのアップデート版は、Windows XPの採用拡大を目指して既存の機能とツールをバンドルしたものに過ぎないという。
Microsoft CEO(最高経営責任者)のSteve BallmerはCNET News.comに対し、「Windows XP SP2はかなり本格的なリリースだ。我々は、たとえLonghornの機能削減やリリースの延期、あるいはその両方が必要になったとしても、XP SP2の開発を優先するために、セキュリティ強化に追加の人員を投入する。Longhornの開発を進めてきた多数のエンジニアが当面はXP SP2の開発に従事する」と語り、さらに「これをコストとして換算すると膨大な金額になる」と付け加えている。
Allchinは、Longhornに携わっている開発者をWindows XPのアップデート版の開発に回したことについて、「SP2では別の方法でセキュリティに取り組む必要があると考えた。そのため、私が社内の大勢のスタッフを自ら横取りしてきた」と語った。だが同氏は、Longhornのベータ版を年内に出荷する可能性も否定しなかった。「年内のリリースもあり得るかもしれない。現在進めているWindows Server 2003 SP1と64ビット版Windowsの開発状況次第だ」(Allchin)
今月初めにMicrosoftが明らかにしたところによると、同社はYukonと呼ばれる次期バージョンのSQL Serverや、Whidbeyと呼ばれる最新の開発ツールなど、ほかの製品の大型リリースも延期したという。当初年内のリリースが予定されていたこれらの製品は、予定が来年へと延期された。
Longhornの延期は各方面で予想されていた。しかし、こうした開発の遅れが明らかになるにつれ、Microsoftには同OSの野心的な計画を実現する力があるのかと、これを疑問視する声も上がっている。
「Windowsのセキュリティ機能は相変わらず大きな問題で、しかもその点がLinuxデスクトップ派にとっては大きなセールスポイントになっていることを考えると、Microsoftでの開発の遅れはそれほど驚くことではない」とRedMonkのアナリスト、Steve O'Gradyは述べ、さらに「Longhornを前面に押し出すことは妥当な戦術かもしれないが、『Longhornの登場がいつになるのか?』など、具体的な状況が全く分からないので顧客の関心をひくことは難しい」と語った。
Media Playerを搭載しないWindowsの供給を強制する、欧州連合(EU)による裁定が、Microsoftの置かれた状況をさらに複雑にしている。Microsoftはこの裁定を不服として上訴しているが、最終的な判断が下されるのは数年後になる。しかしこれは、多数の新機能を搭載するLonghornにも影響を及ぼし、Microsoftのソフトウェア開発手法を決める前例になる可能性がある。Allchinによると、同社は先週出されたこの裁定に関連する300ページを超える文書をいまだに検討しているところだという。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス