携帯電話や工場用ロボットなどのデバイス用組み込みOSの大手メーカーであるWind Riverと、Linuxベンダー最大手のRed Hatが、オープンソースソフトを共同開発することで合意した。両社は米国時間23日に提携を正式に発表する予定。
今回の合意に基づき、両社が共同開発するのはRed Hat Enterprise Linuxの改良版「Red Hat Embedded Linux」。Wind Riverが同ソフトの主要販売チャネルとなり、さらに同社の開発ツールで同ソフトをサポートするという。
売上をどう分配するか、各社が製品をどの程度利用できるか、提携が排他的なものか、提携の継続期間はいつまでか、といった条件面は明らかにされていないが、Wind Riverは声明のなかで「両社とも今回の提携が長期的かつ実り多いものになることを期待している」と語っている。
今回の提携は両社にとって大きな変化をもたらすが、同時に組み込みLinux市場も大きく変わることになる。これまで両社は、同市場においてはほとんど目立たない存在だった。
Wind Riverは2003年に、同社の独自OSであるVxWorksと共にLinuxも採用する方針を発表したが、その取り組みはあまりうまくいかなかった。またRed Hatは、1999年に開始した組み込みLinux開発の取り組みをほとんど中止し、代わりにサーバソフトの開発に専念している。
一方、組み込みLinux市場は好況が続いている。組み込みLinux専門メーカーのMontaVista Softwareは今年2月、同社の2003年の売上が前年比で77%増加し、さらに500種類の新デバイスに同社のソフトが採用されたと発表した。
組み込みソフト市場は、決してLinuxの独壇場というわけではない。Microsoftも虎視眈々と同市場への参入を狙っており、またGreen Hills Softwareなどの組み込みソフト専門メーカーはLinuxに対抗するキャンペーンを展開している。
Wind Riverは以前、オープンソースソフトの知的財産権の基盤について懸念を表明し、Linuxの採用に慎重になっていた。同社は2001年に、Linuxの代わりに、同社の独自ソフトとより直接的な連携が可能なUnixの一種であるオープンソースソフトFreeBSDの使用を試みたが、結局その取り組みは失敗に終わった。
その後同社は方向転換を図り、Ken KleinをCEOに就任させると共に、Open Source Development Labs、Eclipse Consortium、Consumer Electronics Linux Forumといった、いくつかのLinux関連団体に参加した。
LinuxとVxWorksは概ね相補的関係にあり、決して重複しない、とWind Riverの最高マーケティング責任者(CMO)David Fraserは主張する。Fraser によると、VxWorksは非常に迅速な作動を要求される小型デバイスに適しており、一方のLinuxはハードドライブを搭載した高性能家庭用電子機器に適しているという。またLinuxはUnixに代わる通信サーバ用OSとしても優れているという。
Wind Riverでは財政面で困難な状況が続いている。昨年10月末締めの四半期に、同社は690万ドルの損失を計上。これも、前年同期に記録した1430万ドルの赤字に比べれば少ないが、しかし売上のほうは、5830万ドルから4960万ドルへと減少している。
同社は23日に昨年第4四半期の決算を発表する。同社では経常収支は黒字化するものの、1株あたりの損失が4〜8セントになると予想している。
Wind Riverは23日に、この他の計画も発表する予定だ。
同社は、新しいソフトウェア開発ツール「Wind Power IDE 2」についての説明を行う。このツールはLinux、VxWorks、および両者を組み合わせに向けたソフトウェアの開発に利用できる。Fraserによると、ツールに関して、同社はプロプライエタリなフレームワークを捨て、代わりにオープンソースのEclipseがつくるソフトウェアを採用するという。
さらに、Wind Riverは、ハイレベルのソフトウェアも販売する。このソフトには、データセキュリティ機能、リモート診断機能、Microsoftの.NET用ツールで開発したWebサービス用ソフトウェアとの統合機能などが付属する。これらのモジュールはVxWorksもしくはLinuxで動作すると、Fraserは説明している。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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