Adobe Systemsは、グリッドコンピューティング用のソフトウェアを開発するGridIron Softwareと契約を結んだ。この契約により、Adobeのビデオ加工用ソフトウェアが、ネットワークに接続したコンピュータの余剰処理能力を活用できるようになる。
米国時間2日に発表されたこのライセンス契約により、AdobeはAfter Effects Professionalの次期バージョンに、GridIronのXLR8ソフトウェアを盛り込むことになった。After Effects Professionalは、ビデオファイルに特殊効果や動きのあるテキストなどを加えるためのパッケージだ。
ビデオの各フレームにこうしたエフェクトを追加するには、大きな計算処理能力が必要となる場合が多い。GridIronによると、同社ののXLR8ソフトウェアは、こうしたタスクを行なうために、ネットワーク上で使用されていない処理能力をかき集めることができるという。
XLR8のようなソフトウェアは、IT業界が真剣に追い求めているユーティリティコンピューティングの目標を、一歩現実に近づけるものだ。ユーティリティコンピューティングでは、企業のビジネスニーズに応じて刻々と変化するソフトウェア群を、プールされたハードウェアリソースが実行する。ハードウェアは大半の時間をアイドル状態で過ごすのではなく、最大限に活用される。しかしながら、ユーティリティコンピューティングに必要となる高度な管理ソフトウェアは、ようやく登場し始めたところだ。
GridIronの原点となっているのは、欧州原子核共同研究機関(European Particle Physics Laboratory:CERN)のLarge Hadron Colliderプロジェクトの実験による大量のデータ処理のために開発された技術だ。同社は2003年3月にXLR8のバージョン1.0をリリースし、この2日にはバージョン2.0をリリースした。
バージョン1.0とバージョン2.0が最大限能力を発揮するのは、「面食らうほど並列な」コンピューティングタスクだが、こうした処理では、1つのタスクを多数のコンピューティングノードで実行できるよう簡単に分割できる、とGridIronのマーケティング部門バイスプレジデント、Gord Wattsは述べている。さらに、バージョン3は、より複雑な「密接に組み合わさった」タスク向けに調整される見込みだが、密接に組み合わさったタスクでは、異なるノード間ではるかに多くの通信が必要とされる。
GridIronのソフトウェアは、ビデオデータをMPEGファイルにエンコーディングする作業など、より困難な分散コンピューティングタスクに対応できると、Wattsは話している。
Wattsによると、XLR8は他社製ソフトウェアに組み込めるよう設計されているという。Adobeとの契約に続き、同社は「今後2、3カ月の間に複数の顧客を発表する」とWattsは付け加えた。
Wattsによれば、Adobeのソフトウェアには、After Effects Professionalが稼働しているマシン以外に、2台のコンピュータ(のプロセッサ)でグリッドソフトウェアを動かすための許可が含まれるという。顧客は追加ライセンスを購入し、さらに多くのマシンでこのソフトを動かすこともできるようになる。
XLR8のグリッドコンポーネントは、Microsoft Windows、Linux、Apple ComputerのMac OS X、SunのSolarisなどのオペレーティングシステムで動くマシン上で稼働する。
XLR8はバージョン2.0で、処理性能やセキュリティ機能が向上している。このセキュリティ機能は、認められたアプリケーションだけがコンピュータのリソースを使えるようにするものだ、とGridlonは説明している。またこれは、ネットワーク全体で素早くデータ共有するための技術も利用する。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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