今週20日(米国時間)から始まるLinuxWorld Conference and Expoには、先にSuSE Linuxを買収して新たにLinux陣営の主要なプレーヤーとなったNovellも参加するが、同社の発表のなかには、サーバメーカーのDellやEgeneraと新たに結ぶ提携関係も含まれるだろう。
Novellには、1990年代にサーバ市場で、自社のNetWareオペレーティングシステム(OS)がMicrosoftに敗北を喫した経験がある。そのNovellが今月、2億1000万ドルを投じたSuSE Linuxの買収を完了し、現在はSuSEの製品に望みを託している。SuSEは、これまでLinux市場で首位に立つRed Hatの後塵を拝していたが、しかしNovellでは自社の財務力、顧客とのつながり、さらに知的財産を役立てることで、SuSEの市場シェアを押し上げられると期待している。
SuSEが徐々に前進している一例としては、Dellとの間で取り交わすと見られている提携が挙げられる。Dellはサーバ大手4社のなかで、これまで唯一SuSE Linuxをサポートしていなかった。また、新興のブレードサーバ専門メーカーEgeneraもSuSE Linuxをサポートするだろう。同社のLinuxサーバは、これまでRed Hat製品しか採用していなかった。
IBMは、これまで自社の5つあるサーバ製品ラインでSuSE Linuxをサポートしてきたが、NovellによるSuSEの買収に際しては、同社に対して5000万ドルの投資を行うことでその動きを支持しており、またこの買収でRed Hatに対するSuSEの立場が上向くものと考えている。
「我々は、SuSEの立場が向上することについて、とても健全なことだと考えている。なぜなら、Red HatとSuSEとの間に絶妙な均衡が生まれるからだ」と、IBMのLinux戦略および市場開発を担当するバイスプレジデントのScott Handyは述べている。
だが、SuSEにはまだ成すべき仕事が残されている。Dellの支持を得たことで、SuSEの人気が最も高い欧州市場の顧客も、より良いサポートを得られるようになるだろう。だが、Dellの広報担当Carmen Maverickは、「Linuxに関しては、Red Hatがまだ主要なパートナーだ」と述べている。
ソフトウェア企業各社もまた、Novellと取引を成立させている。Veritasは、自社のストレージ管理およびサーバ可用性ソフトウェアのSuSE版発売を発表する予定で、またメインフレームの専業メーカーであるCompuwareとアプリケーションサーバ大手のBEA Systemsも、それぞれNovellとの提携を発表すると見られている。
コンピュータ業界の大手各社が自社のLinux関連製品強化に動いているのも、驚くべきことではない。Linuxサーバは2003年に30億ドル近い売上を記録したが、これが2007年には90億ドル程に増加すると見られていると市場調査会社のIDCは述べている。また同時期に、Linuxサーバの出荷台数は約80万台から約250万台まで増えるとIDCでは見込んでいる。
その他のニュースとしては、NovellのCEO(最高経営責任者)Jack Messmanが、今回のLinuxWorldの口火を切る基調講演を行うが、このなかで同氏はNovellが既存のオープンソース団体への参加を発表することが挙げられる。候補先としては、IBMが始めたプログラミングツール関連のコンソーシアムEclipseの可能性が高い。また、IBMと共同して新たなセキュリティ認証を始めることも明らかにする予定だ。
LinuxWorldは、Linux業界最大のトレードショーで、前回2003年8月にサンフランシスコで開かれた際には、合わせて1万1000人以上の参加者が訪れたと主催者のIDG World Expoは述べている。
立ちはだかるSCOの脅威
しかし今回のLinuxWorldには、背後に暗い影が差している。Linuxに対するSCOの法的攻撃がそれだ。
参加者の誰かの勤め先が、SCOから2月に著作権侵害で訴えられるという可能性も充分あり得る。
前回8月のサンフランシスコでは、SCOはLinuxWorldで話題の中心となったIBMが不正にUnixの知的財産をLinuxに移植したと主張した。同社は、Linuxユーザーに対して請求する使用料を公表した。一方IBMは、SCOにはIBMの特許を侵害した疑いがあると反訴し、またRed Hatはこの問題の解決を求めて独自の訴訟を開始した。
いまSCOをめぐる状況は変わりつつある。2月中旬までにLinuxユーザーを提訴するとのSCOの言葉に直面したベンダー各社は、顧客を保護するための法的措置を用意しており、また開発者を保護するものも1つある。
「個人的には、とりわけ補償のための基金ができたおかげで、SCOの件は日ごとに問題でなくなりつつあると思う」と、C.E. Unterberg Towbinの証券アナリストKatherine Egbertは述べている。
Novellは先週、自社のLinux顧客向けに補償提供を始めたが、これはHewlett-Packard(HP)の動きに続くものだ。
他の保護プログラムとしては、Open Source Development Labs(OSDL)が提供するLinuxユーザー向けの法的弁護を目的とした1000万ドルの基金や、Red Hatが設立したオープンソース開発者向けのものもある。
Novellは、IBMとRed Hatの動きに加わり、SCOを提訴した3番目の大手企業となった。同社は、1995年と96年にSCOの前身がNovellのUnixビジネスの一部を買い取った際に、Unixの著作権を請求しなかったことから、いまでもその著作権は自社にあると主張している。
SCOの主張はLinuxコミュニティの注意をとらえたが、しかしLinuxの勢いをそぐには至っていないようだ。「SCOの起こした訴訟は、Linuxサーバの売上を鈍化させていないようだ」と、調査会社のIDCは先週発表した市場予測に関する説明のなかで述べている。
SCOは、熱心な信者も多いLinuxユーザーにとっては悪役になっているが、こうしたユーザーがこれまでターゲットとしてきたMicrosoftのほうも、Linuxに対する攻撃の手を緩めてはいない。同社はLinux攻撃の広告を展開し、Linuxの採用を検討しているITバイヤーを自社製品のほうへなびかせようと試みている。また、同社で進めるShared Source Initiativeを拡大し、Officeやその他のアプリケーションのソースコードを顧客企業に公開する可能性も検討している。
さらにLinuxWorldでは、Microsoftは再びServices for Unixという無料のソフトウェアをブースに展示する予定だ。このソフトはWindows上でUnixのプログラムを走らせるためのものだが、MicrosoftはUnixやLinuxを使う管理者がこの機能を利用してWindowsに乗り換えてくれることを期待している。
デスクトップ、そしてサーバはどうなる?
Microsoftはこれまで、自社が握るデスクトップPC用OSの市場で攻撃を受けても、ほとんど傷ついたことがなかった。だが、Linuxファンはそれも変えたいと願っている。Open Source Development Labsは、同ショーで、デスクトップ用Linux技術の改善に向けた複数の企業が参加する新しい取り組みについて発表を行う予定だ。
「デスクトップ開発の舵取りをする委員会も、技術を検討するワークグループも、マーケティングを担当するワークグループもできる」と、OSDLのCEO(最高経営責任者)であるStuart Cohenは先週行われたインタビューの中で述べている。ODSLで検討予定の技術的な問題のなかには、Windowsマシンとネットワークを共有する際のLinuxの相互運用性も含まれると同氏は付け加えた。
HP、IBM、Red Hat、Novellをはじめ、他のいくつかの新興企業でも、デスクトップ用Linuxの開発を進めている。そのうちの一社Xandrosは、LinuxWorldでビジネスユーザー向けの製品について説明を行う予定だ。
サーバはLinux市場のなかでも最も確立された分野だが、今回のLinuxWorldでも、多くの注目を集めるだろう。
MySQLは、社名と同じ製品名を持つオープンソースのデータベースを開発しているが、同社はZendとの戦略提携を発表する予定。Zendは動的なウェブサイトをつくるのに使われるPHPソフトのサポートを販売する企業。MySQLはまた、データベースサーバ向けのグラフィカルな管理ツールも発表することになっている。
Red Hatは、2003年末からテストを始めている、自社のアプリケーションサーバソフトを公開しそうだ。
基調講演の1つは、OracleでLinux Program Officeのバイスプレジデントを務めるDave Dargoが行う予定だ。また、IBMでEビジネスに関するオンデマンドの取り組みを進めるゼネラルマネジャーRoss Mauriが、別の基調講演を担当する。
Linuxサーバの多くはIntel製のプロセッサを採用しているが、他社のチップも重要だ。Pogo Linuxというサーバメーカーは、Advanced Micro Devices(AMD)のOpteronチップを4基搭載した新システムを公開する。また、IBMは自社のPowerプロセッサで動くLinuxサーバ用のDB2を試したいプログラマの登録を開始する。
IBMはまた、MicrosoftがWindows NTのサポートを徐々に取りやめることに目を付け、Windowsを使う顧客をLinuxに乗り換えさせる計画についても説明を行う予定だ。
IDCの推定では、Windows NTが稼働するサーバはいまだに200万台を数えるとIBMのHandyはいう。「我々は、このなかから最大で100万台がLinuxに移行する可能性があると読んでいる」(Handy)
同氏はいま、Linuxが直面する主な課題が、以前の技術的な障害から、企業間の提携関係やソフトウェアのサポートに移行していると考えている。そしてIBMでは、多くの時間を費やして、Linux関連ビジネスを行うよう他のIT企業に働きかけなくても済むようになったという。
「Linuxはもう止めようがない。すでに充分な信用を勝ち得ており、我々はもはやITベンダー各社を説得する必要もない」(Handy)
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」