1999年のOracle 8i、2001年のOracle 9iに続き、今年発表されたOracle 10g。10gの市場投入を目前にして、日本で3年ぶりとなるOracleWorldが17日より2日間の日程で開催された。
Oracle 10gでは、これまでの「インターネット」から「グリッド」へとキーワードがシフトしている。ユーティリティコンピューティング時代の到来を見越し、電力網(パワーグリッド)にちなんだグリッドというコンセプトを元に10gが誕生したわけだ。開会にあたってのオープニングセッションで日本オラクル代表取締役社長の新宅正明氏は、「グリッドはオラクルの目指す新しいコンピューティングモデルであり、インフラであるアプリケーションサーバ層、データベースサーバ層、ストレージ層のすべての層にわたってリソースの共有を可能にするものだ」と述べている。「これにより、ばらばらにわかれているシステム環境をひとつの基盤として仮想的に一元管理することができ、複雑性を排除した安全なオペレーションが可能となる。また、リソースの活用においても大きな力を与える」(新宅氏)
日本オラクル代表取締役社長の新宅正明氏 | |
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新宅氏は、Oracle 10gがTransaction Processing CouncilのTPC-Cベンチマークで世界記録を達成したこともアピール。これはOracleとHewlett-Packardが共同で行ったもので、Oracle Database 10gとLinuxをベースとしたHPのIntegrityサーバクラスタの組み合わせで、1分間に118万トランザクションを達成したというものだ。「これまで8i、9iと、徐々に倍増の力を示してきた。今回のHP IntegrityサーバとLinuxとの組み合わせで、10gでも高い価格性能比を証明できたことになる」と新宅氏。同氏によると、10gではWindows環境もこれまで以上に意識しており、「Windowsでもナンバーワンの評価をもらうべく、製品改良を重ねた」としている。
同セッションに登場した米Oracleのシニアバイスプレジデントを務めるジョン・ホール氏も、「10gに含まれるデータベース管理ソフトウェア、アプリケーションサーバソフトウェア、そしてシステム統合管理ツールの3つのコンポーネントは、様々なOS上で走らせることができる。わが社でもLinux上で電子メールシステムや登録システム、開発システムなどをグリッド化させ、倍のパフォーマンスを半分のコストで実現することができた」と述べた。
東大教授の坂村氏も登場
新宅氏は、ユビキタスコンピューティング時代では日本発で世界に発信できるビジネスが多いと語る。この分野で貢献できる製品、Oracle Liteを提供しているオラクルは、今月初めに組み込みOSで高いシェアを握るTRONへの取り組みを本格化させると発表したばかり。同社は先週開催されたTRONSHOWでも、TRONベースの開発プラットフォームT-Engineに向けたデータベース、Oracle Lite for T-Engineを出品していたが、OracleWorldではTRON開発者の東京大学教授 坂村健氏が特別ゲストとして壇上に現れた。
坂村氏は、同氏が会長を務めるT-Engineフォーラムに積極参加しているデータベース企業はオラクルが初だと述べ、「ユビキタスコンピューティングは、電子タグだけでなく、データベース、そのデータにアクセスする通信システム、サーバシステムなどのトータルなシステム。そのなかでT-Engineフォーラムはインフラを提供する役割を担い、オラクルなどの企業がアプリケーションを提供する役目を担う。これにより、共にユビキタスコンピューティングが実現できるのだ」と語った。
OracleWorldでは社員犬のウェンディーにも会える | |
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今回のOracleWorldでは、入場パスにユビキタスIDセンターが認定しているミューチップというRFIDを搭載しており、各ブースではパスをかざして入場管理を行えるようになっている。坂村氏は、Oracle Liteでデータベース管理ができるようになっているユビキタスコミュニケータを持って登場し、自らの入場パスをコミュニケータにかざして入場者情報が表示されるデモを行った。
「今年はユビキタスコンピューティング元年で、多くの人にユビキタスコンピュータが何であるかを認知してもらう年だったが、来年は実際に多くのものが製品として出てくるようになるだろう」と坂村氏。同じく新宅氏も、「ユビキタス分野で、オラクルとしても日本発のソリューションを世界に広げる努力をしていきたい」と語った。
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