「仮想化」がついにブレイクする?--米MS、米VMwareから新製品

 米Microsoftと新興企業の米VMwareは、1台のIntel系コンピュータ上で複数のオペレーティングシステム(OS)のインスタンスを実行させる技術を、また一歩主流へと近づける。

 「仮想化」と呼ばれるこの技術は、あるソフトウェア・レイヤー(層)で、この層がプログラムを、それが動作しているハードウェアから切り離すというもの。Microsoftでは、このアイデアを当面は、新しいコンピュータ上で古いプログラムを動かさなくてはならない顧客のサポートに利用しようとしている。だが、戦略の上では、VMwareの方がさらに先を行っている。同社では、コンピュータ業界で人気の高まっているユーティリティコンピューティングというコンセプトに目を付け、自社のソフトウェアをこのコンセプトの鍵を握る部分にしようとしているのだ。

 Microsoftは米国時間10日、Virtual PC for Windowsの新バージョンの開発が完了したことを発表した。同社によると、「Virtual PC 2004」と呼ばれるこのソフトウェアは、年内にMicrosoftとボリュームライセンス契約を結ぶ顧客や小売店向けに発売されるという。

 VMwareも、7月にControl Centerという名前で詳細を明らかにした新しい管理ソフトウェアを、10日にリリースする予定である。同社マーケティング担当バイスプレジデントのMichael Mullanyによると、このソフトウェアの名前は現在「VirtualCenter」に変更されているという。

 VMwareはさらに、米IBMや米Hewlett-Packard(HP)などの企業が、自社のユーティリティコンピューティング技術にVMwareソフトウェアを容易に統合できるようにするソフトウェア開発ツールもリリースした。VMwareによると、米BMC Software、米Computer Associates International(CA)、米Veritas Software、HP、そしてIBMでは、こうした統合作業にこの開発ツールを使っているという。

 VMwareの現在の主力ソフトウェア製品ラインは、サーバ向けに設計されたものだ。いっぽう、Microsoftの開発するVirtual Server製品は、2004年前半まで登場しない見込みで、いまのところ同社ではPCに焦点を絞っている。

生まれ変わった「仮想化」

 「仮想化」というコンセプトは、昔からあるものだが、現在このコンセプトに対する関心が新たな高まりをみせている。IBM、HP、Microsoft、米Sun Microsystemsといった大手各社では、ユーティリティコンピューティングの考え方のもとで、複数のサーバやストレージシステムをひとつに結びつけ、膨大な計算処理能力をつくり出すための方法を開発中だが、こうした企業が「仮想化」に高い関心を示しているのだ。

 仮想化は、管理者もしくは自動化された管理ソフトウェアが1台のハードウェアから別のハードウェアへと、計算処理作業を簡単に移行できるようにすることで、ハードウェアのアップグレード、ジョブへの計算処理資源の割り当て拡大、機器の障害への対応、あるいは各種の変更といった作業を容易にしてくれる。

 1台のサーバをパーティションで仕切り、複数の独立したマシンとして使おうという「パーティショニング」の考え方の土台となるのが仮想化だ。パーティショニングの考え方は最初、メインフレームで広く普及していたものだが、最近ではUnixサーバにも広まりつつあり、さらにIntelのXeonプロセッサを搭載した普及機でも、こうした概念が使われるようになってきている。MicrosoftやVMwareは、仮想化やパーティショニングに対して、ソフトウェアベースのアプローチを取っている。だが、Intelは2008年登場予定の「Vanderpool」(コード名)という技術で、ハードウェアのサポートを改善したいと考えている。

 Illuminataのアナリスト、Gordon Haffによると、VMwareやMicrosoftのソフトウェアはユーティリティコンピューティングのビジョンとうまく調和するという。

 「物理的な部分とのつながりが少なければ少ないほど仮想化は進む。VMwareとVirtual Serverはこの仮想化への流れの一部だ」(Haff)

 さらにHaffは、VMwareが経営的にも好調であると付け加えた。「同社は、現在IT業界で最も成功している小規模企業の1つだろう」(Haff)

 サーバ管理者は、VMwareの管理用ソフトウェアを使うことで、多数のコンピュータ上にある仮想マシンソフトウェアの動作をコントロールできるようになる。さらに、VMotionと呼ばれるソフトを追加すれば、1台の仮想マシンをそのまま別のコンピュータへ移動できるようになる。

 この管理用ソフトウェアの価格は5000ドルだが、そのほかに同ソフトがコントロールするサーバに対して1プロセッサあたり300ドルが加算される。VMotionパッケージは、さらにプロセッサ1基あたり700ドルが加算される。

 Microsoftは2月に、Virtual PCなどの各種の仮想マシン技術を、米Connectixから取得した。

 Microsoftは新しいVirtual PC製品で、1台の仮想マシンがサポートするネットワークアダプタを最大4枚にしたり、同時実行可能なオペレーティングシステムの数を増やすとともに、パフォーマンス向上にもつながる最大4Gバイトのメモリをサポートするなどの、新機能を追加しながら、希望小売価格を229ドルから129ドルへと引き下げた。ただし、この価格にはVirtual PCで動かすオペレーティングシステムの価格は含まれていない。

 Microsoftにとって、Virtual PCは、まだパソコンのOSをWindows XPへアップグレードしていない企業に対して、そうするよう納得させるための新たな手段だ。Windows XPでは動かない古いアプリケーションがあるからという理由で、アップグレードに二の足を踏んできている企業でも、Virtual PCがあればその問題がなくなる。

 「Virtual PCを導入することで、Windows XPへの移行の筋道が立てられる」と、MicrosoftでVirtual PCのプロダクトマネジャーを務めるCarla Huffmanは話している。

Linuxも動かせるVirtual PC

 Microsoftでは、Virtual PCを主に、一台のパソコンで複数のバージョンの異なるWindowsや、さらにはOS/2まで動せるものとして売り込もうとしている。だが、このソフトを使えば、いろいろなバージョンのLinuxも走らせられる。

この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。

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