米Hewlett-Packard(HP)や米Oracleといったコンピュータ業界の大手や、さらには米Microsoftさえ、米Novellによる独SuSE Linuxの買収計画を歓迎しており、各社とも、前よりも財政面で強固なビジネスパートナーを得られると述べている。
Novellは、米国時間4日に2億1000万ドルで、オープンソースOSのナンバー2ベンダー、SuSE Linuxを獲得すると発表した。
この買収計画は、Linuxベンダーが個人ユーザーを見捨てることになるのではないかと恐れるLinuxファンの間に、不安を巻き起こしているが、いっぽう業界各社は概してこの動きを歓迎している。
「ひところ顧客は喜んでスタートアップベンダーの製品を買っていたが、そうしたブームは去ってしまった。いまや、顧客は、長期的に発展する見込みのある安定したベンダーからの購入することを考えている。Novellによる今回の買収によって、SuSEはしっかしとした財政的支援と、世界市場での存在感、そして充実したサポート体制を得ることになる」と、HPのLinux担当バイスプレジデント、Mike Balmaは述べている。
HPは、SuSEのLinux、ならびにライバルのRed Hatが配布するLinuxを搭載したサーバを販売している。さらに、HPには長年にわたるNovellとの関係がある。
Novellには、たとえば電子メール、ファイルストレージ、プリントサービス、ウェブサイトホスティングなどの用途に向けた、実績のあるソフトウェア製品が揃っており、SuSE Linuxが、これらのNovell製品と併せて販売されようになれば、サーバメーカーにとって非常に魅力的な製品になると、米GartnerアナリストJohn Enckは語る。さらに、Novellは、SuSEが拠点である欧州から全世界へと展開することも支援できると、同氏は付け加えた。
Linux関連のビジネスに大きな比重を置いているデータベース大手のOracleも、同様の見方をしている。「NovellによるSuSE Linuxの買収は、SuSE Linuxの強化、ひいてはLinuxソフトの一層の普及につながる」と、同社は声明のなかで述べている。
しかし、最も強い支持は、業界最強のLinux提唱者である米IBMが示したものであろう。来年1月に予定されているSuSEの買収完了時に、同社はNovellに5000万ドルを投資すると述べた。IBMは、今回の買収が同社の4つのサーバ製品ラインや、広範な品揃えを誇るサーバソフトウェアの礎としての、Linuxの将来的な展望を確実なものにすると述べた。
Linuxが成功すれば一番打撃を被るMicrosoftさえ、いつもながらの皮肉たっぷりな口調で、今回の動きを歓迎している。
今回の買収は、きちんと決められたリリース時期、共通の基盤からさまざまな方向に発展する製品というような、プロプライエタリなソフトウェアの世界におけるビジネス慣行が、オープンソースのLinuxが成功するうえでも必要であることの証だと、同社は述べている。
「NovellがSuSEを買収するという発表は、Linux業界の整理統合と商業化という流れを示す新たな証だ」と、Microsoftプラットフォーム戦略ジェネラルマネジャー、Martin Taylorは語った。
しかし、「Microsoftが快く思っているはずがない」と言うのは、GartnerアナリストのEnck。「NovellとSuSEが一体になることで、両社が個々に存在していたときより、強力な存在になることをMicrosoftは認識しているはずだ。Novellは、Microsoftサーバ環境に対抗できる製品群をすでに提供しようとしていたところだったし、今回の買収計画はそれを強化するものだ」(Enck)
Red Hatも、この買収合併で形勢が不利になると、同氏は付け加えた。「Red Hatにとっては難局だと思う・・・Novellのソフトウェア製品群には、すでに何年も市場で実績を積んだコンポーネントがあり、これに対抗するのは難しい」(Enck)
Red Hatのマーケティング担当バイスプレジデント、John Youngは、これよりも楽天的な見方をしている。「Novellは、Linuxが戦略的なプラットフォームであるとのメッセージを伝えることになる・・・顧客がLinuxの選択肢を考慮する際には、Red Hatもそのなかに含まれるようになると私は確信している」と、同氏は述べた。
Red HatとSuSEのそれぞれのLinuxを搭載したサーバを販売している米Sunは、SuSEの経営母体が変わっても同社には影響がないと、同社のオペレーティングプラットフォームグループ担当バイスプレジデントのJohn Loiaconoはコメントしている。しかし、同氏はSunの予想を上回るペースで、企業向けのLinuxベンダーがわずか2社に統合されてしまったと述べ、この統合はLinuxにダメージを与える可能性があると付け加えた。
「実際のところ、Novell/SuSEとRed HatのLinuxは異なるものだ。それぞれが独自に製品を拡張するので、その違いはますます大きくなっている」とLoiacono。Sunでは標準化を進め、どちらのLinuxバージョンでも同じアプリケーションソフトが動くようになるのが望ましいと考えている。「90年代初頭には、Unixの世界で分裂が進んだ。Sunでも当事者として関わっていたが、Linuxではそうした事態が繰り返されないように願っている」(Loiacono)
Open Source Development Lab(OSDL)のLinuxアナリスト、Stacey Quandtは、NovellのLinuxソフトウェアの登場で、Sunに対するプレッシャーが強まると見ている。
「Sunにとっては確かに心配に違いない」(Quandt)
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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