米SCO Groupは、対IBM訴訟において、General Public License(GPL)への直接攻撃を開始した。GPLは、Linuxをはじめとする数多くのオープンソースプロジェクトや、SCO自体も販売を続けるソフトウェアの法的土台となっている。
SCO Groupは米国時間24日遅く、IBMの裁判文書に対する回答書を裁判所に提出した。その中で同社は、「GPLは著作権法、反トラスト法、輸出管理法だけでなく、米国憲法にも違反している」とし、GPLは実効性がないと主張した。
GPLは、すでに今年8月にIBMが提出したSCOに対する数多くの反論の中心論点だったが、今回のSCO Groupの主張により、さらに多くの注目が集まっている。
「GPLはこれまで全く吟味されたことがなかったが、(SCOの主張により)その可能性が高まっている」と知的財産権専門の弁護士で、Testa Hurwitz & Thibeault法律事務所のパートナーである、David Byerは語る。「(GPLの無効判決が出れば)多くの人が苦境に立たされる可能性がある」(Byer)。
GPLの原理を推進し、法廷内での潜在的違反行為の防止に取り組んでいるFree Software Foundation(FSF)は、SCOのこの主張に対し猛反撃している。
コロンビア大学法学部教授で弁護士でもあるEben Moglenは、SCOの主張を「全くばかげている」と切り捨てた。「コピー、修正、再配布の許可を与えることは、米国憲法やその他の法律に全く違反しない」(Moglen)。
SCOは、裁判文書のなかでは、この点について詳しく述べていないが、声明の中で「米国著作権法1条8項には、議会は著作権を規制できるとあり、FSFや他の組織が(規制できるかどうかを)決めることではない」と語った。
一方、IBMは全く平然とした様子だ。同社の広報担当、Mike Darcyは、「IBMは、自社の反訴に確信を持っており、本件の裁判を楽しみにしている」とし、その裁判でGPL問題など、SCOの特定の主張に対処していくと述べた。
GPLはLinuxの中核部分(カーネル)をはじめ、多くのオープンソースプロジェクトに採用されている。例としては、OpenOfficeデスクトップソフトウェアスイート、MySQLデータベース、Gaimインスタントメッセンジャーソフト、Snort侵入探知プログラムなどが挙げられる。
GPLは、Unixクローンを作成するための「Gnu's Not Unix(GNU)」プロジェクトを管理する目的で、Richard Stallmanが80年代に考案したライセンス供与条件。GPLでは、全ての人にプログラムを構成するソースコードの修正/配布が認められるが、修正版を配布する際に修正内容を公開することが条件となっている。
SCO自身もGPLと全く無関係ではない。同社は今年5月まで自社バージョンのLinuxを販売しており、さらに現在発売中の同社のUnix製品、UnixWareとOpenServerにはGPLを採用したソフトが含まれているのだ。
仮にGPLを無効とする判決が出ればSCOも損害を免れないだろう、とByerは指摘する。「GPLの下で提供されるソフトは著作権で保護される。GPLがなければ、GPLのライセンシーは著作物の使用権を失う」(Byer)。
米Red Hatの社内弁護士であるBryan Simsは、SCOとIBMの訴訟ではGPLが大きくクローズアップされているが、同社はGPL自体は依然として二次的な問題と考えている、と語った。「中心はあくまで契約上の問題であり、GPL関連の問題については、まだそこまで到達すらしていない可能性がある」(Sims)。
しかし、弁護士やビジネスマンたちは、GPLの検証を歓迎するかもしれない。「現在(GPLには)不確定要素があり、ビジネスマンたちはそれで常に対応に苦慮している」(Byer)。
SCOがGPLを攻撃した理由の一部は手続き上のものらしく、よって後に反論する能力は失っていない、とByerは付け加えた。「考え付く限りの全ての主張や要求を提出しなかったら、それについての権利を放棄したことになる」(Byer)。
SCOは同様の理由で、同社が特許の無効を主張するなど、様々な方法で4つの特許権を侵害したとするIBMの主張に反駁した。
SCOはGPLの法的基盤を疑問視しているものの、いまだにGPLを採用したソフトとの関係を断ち切っていない。
最も顕著な例は、SCO自身が今年5月までLinuxを出荷していたことだ。当時同社は、知的財産権侵害についての懸念から出荷を中止せざるをえなくなったと語った。SCOでは、いまだにLinuxのソースコードをダウンロード可能な状態にしてある。
また、SCOはGPLを採用しているSambaソフトの出荷を続けている。Sambaは、UnixまたはLinuxを搭載したシステムと、Windowsネットワークとのファイル共有を可能にするソフトで、SCOのUnixWare とOpenServerの2つの製品の一部に導入されている。
SCOの広報担当、Blake Stowellによると、同社はSambaの使用に関し、保障や法的保護の提供は一切行っていないという。Stowellは、あくまで仮定上の例とした上で、もしMicrosoftが自社のファイルシステムに関する知的財産権がSambaによって侵害されたと断定し、Sambaを使用する企業を提訴し始めたら、SCOは自社製品へのSambaの導入を中止するだろうが、同ソフトを使用している顧客に法的保護は与えない、と語った。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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