多くの商用ソフトウェア製品で使われている2文字の国識別コードなど、一般的に利用されている各種業界コードの使用料引き上げにつながる提案に対し、複数のIT標準化団体が警戒感を強めている。
問題となっているのは、複数のコード標準に関して使用料を徴収するというInternational Organization for Standardization(ISO)の仮提案。これに対して、ISO準拠の製品を販売するソフトウェアメーカーに使用料の支払いを強制すれば、標準に対する支持が弱まる可能性がある、との反対意見が出ている。ISO 3166、ISO 4217、ISO 639の各標準は、それぞれが国、通貨、そして言語の各コードを規定している。
ISOは現在、同団体の管理するさまざまな標準仕様書の販売や複製からロイヤリティを得ているが、国識別コード標準には課金していない。さらに、ISOは現在のところ、これらのコードをソフトウェアアプリケーションの内部などで使っても、使用料を徴収していない。
今回の提案はまだ議論が始まったばかりで、今後大きく修正が加えられることや、棚上げにされることも考えられる。それでも、International Committee for Information Technology Standards(INCITS)、World Wide Web Consortium(W3C)、そしてUnicodeなどの技術標準化団体は、ISOの仮提案に一斉に異議を唱えている。
さまざまなコンピュータシステムで使われる文字セット標準の確立を目指すコンソーシアム、Unicodeの会長Mark Davisは、「これらのコードから使用料を取ると、オペレーティングシステムをはじめ、ほぼすべての商用ソフトウェア製品に大きな影響が出る。これらは、Windowsでも、Javaでも、UnixやXMLでも使われている、どこでも目にする標準だ」と語った。
ISOの提案への激しい反発は、遅ればせながら権利が主張されるようになってきた知的財産権を巡り、ソフトウェア業界がますます敏感になりつつあることを示している。そして、著作権フリーであるとの仮定が、少なくとも多少は関係して採用が進んだ標準や技術に対して、このような権利が主張されている。主な例としては、MP3デジタル音楽フォーマットやGIF画像フォーマットのほか、米SCO Groupが所有を主張するLinuxオペレーティングシステムの一部も、これに含まれる。
業界アナリストによると、ISOの提案は著作権フリーの方針が注目を集め始めている標準化団体の最近の傾向に反するという。たとえば、W3Cは今年初め、特許のある技術の代わりに可能な限り著作権フリーの代替技術を推奨するという考え方を支持している。
Summit Strategiesのアナリスト、Dwight Davisは、「この動きはオープン化や著作権フリー技術の採用に向かう傾向と完全に逆行している。少なくともソフトウェア業界においてはそうだ」と語っている。
国識別コードなどの使用料負担に反対するINCITSからの8月1日付けの書簡によると、ISOの使用料に関する提案は5月に既に浮上していた。
ただし、この提案への抵抗は、ISOの委員会会議での課金問題再考を同機構に促す書簡を、W3CがISO会長のOliver Smoot宛てに送った先週になって、一段と熱気を帯びてきた。この会議は米国時間20日からアルゼンチンのブエノスアイレスで開かれている。
コードを巡るISOの権利主張は、標準を記述した文書類に対して同機構が所有する著作権に起因する。ISOが標準を無償公開するようなことは一般的にはなく、同機構ではこれらを販売し、自らの運営費に充てている。この提案に反対する人々によると、これらの著作権がコード自体にも適用されるかどうかについては、まだ判断しかねるという。
W3Cで国際化活動部門のリーダーを務めるMartin Duerstは、「これまで、コード自体に関して同機構がどのような形で著作権を保有しているのか詳しく議論されたことはない。著作権が適用されるのは個々のコードを集めた集合全体に対してであり、これが個々に適用されることはないだろう。個々の言葉に著作権はないが、その集合と定義には著作権がある辞書のようなものだ」と語っている。
Duerstによると、ISOの提案が問題なのは、ほかの多くの標準化団体がISOのコードを採用しているためだという。たとえば、ISOの国識別コードはIETF(Internet Engineering Task Force)が広範にわたって採用しているという。
UnicodeのDavisは、使用料に関する提案は「当然の結果として消滅するだろう」としながら、それでもソフトウェア業界にとっては相当な脅威だ、と考えている。
Davisによると、使用料に関する提案はISOの各国支部に通達されており、20日にはISOでも議論したが、承認はかなり先の話になるという。
W3CのDuerstによると、今後どうなっていくにせよ、ISOの提案は無償のオープン標準の重要性を浮き彫りにしているという。
「これは法的問題ではなく標準化に対する考え方の問題だ。使用料の請求が始まれば、その標準は使われなくなる。そうなれば大きな混乱をきたすだろう」(Duerst)
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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