WindowsとLinuxでエンタープライズシステムを構築した場合、実際にTCO(Total Cost of Ownership:システム所有にかかる総費用)が少なくて済むのはどちらなのか。19日、都内にて開催されたWindows Server World Conferenceにて、IDC JapanのITスペンディングリサーチマネージャー塚本卓郎氏が「エンタープライズコンピューティングにおけるTCO比較」というトピックで講演を行った。
一般にLinux環境というものは無償OSと無償アプリケーションで成り立っており、安価なシステムというイメージがある。この認識が正しいのかどうかという調査が昨年12月、米国にて行われた。調査対象となったシステムは、LinuxおよびWindows 2000をOSとして使用する汎用サーバシステムで、5種類のワークロード(ネットワーキングサービス、ファイルサービス、プリントサービス、Webサービス、セキュリティサービス)を対象としている。また、コスト要因として調査した項目は、ハードウェアとソフトウェア(購入、導入、保守コストを含む)、人件費、システムの停止によるユーザーとITスタッフの生産性のロス、スタッフ教育費用、およびアウトソーシングなどである。
ワークロード別に見た過去5年間のTCOを比較したところ、費用のかかる順番は、ファイルサービス、プリントサービス、セキュリティサービス、Webサービス、ネットワーキングサービスの順。WindowsとLinux間でこの順位に違いはないものの、Webサービスを除くすべてにおいてLinuxのTCOが高くなっている点を塚本氏は指摘する。
IDC Japan、ITスペンディングリサーチマネージャーの塚本卓郎氏 | |
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これについて塚本氏は、総コストの内訳で62.2%を占めている人件費が、Linuxのほうが高いためだという。「人件費は、ワークロード別に見てもすべての分野において最大のコスト要因となっており、この部分にコストがかかるLinuxはTCOも膨らんでしまう」と塚本氏。Linux技術者が増加するにつれコストダウンも期待できるとしているが、「それでも急速な改善は困難だろう」という。
人件費の次に大きなコスト要因となっているのが、システム停止による生産性のロスだ。これは全コストの23.1%を占めているが、「このコストに関しては、Windowsのほうが高い」と塚本氏。ただ同氏は、調査対象となった汎用サーバシステムにおいては、Windowsシステムの方が大きくて複雑なものが多いということも指摘している。
ハードウェアやソフトウェアのTCOについては、おもに導入時のみのコスト要因となるため、「5年というスパンで見ると、ハードウェアとソフトウェアの費用を合算しても全体のコスト要因の10%にも満たない」と塚本氏。この部分のTCOはWindowsシステムのほうが高いのが現状だが、「将来的にはLinuxも普及が進み、サービス負荷も高くなる。それにつれてプラットフォームコストが上がることも考えられる」と塚本氏はいう。
Windows Server Worldカンファレンスでの講演ということも手伝ってか、Windowsに有利な発言が目立つ内容ではあったが、塚本氏は「実際に導入を考える際には、導入の用途によってどのようなシステムを採用するかを考えるべき。用途が違うとTCOも変化するということを念頭においた上で、この調査内容を参考にしてもらいたい」と中立的な意見を述べて講演を締めくくった。
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