巨大オンラインショッピングモールとして知られる楽天では、サイト構築にあたって多数の言語やDBMS、OSを使用している。1997年の創業時からトライアル&エラーを重ねつつ徐々にサイトを拡大していったことや、数多くの企業買収を重ね、買収した企業が使っていたものをそのまま使用していることなどがその多彩なシステムの背景としてあるわけだが、その中にはPHPやMySQLなどオープンソースのものも含まれている。同社がPHPを採用する背景には何があったのか。楽天の楽天事業カンパニー開発本部 開発推進部部長、安武弘晃氏が、ゼンド・オープンシステムズ主催のセミナーにて語った。
楽天は、現在月間ページビューが約1億6000万で、会員数400万人、出店数約7000社を抱え、サイト内での買い物件数が月に約90万件にものぼる巨大ショッピングモールだ。ウェブのショッピングサイトとして参考例があまり存在しなかった1997年創業時から自前でシステムを作りこみ、現在も大人数の開発者が、複数のアプリケーションを組み合わせた複雑なシステムの開発に取り組んでいる。
JavaやPerl、C、ColdFusionなど、数多くの言語を使用している楽天がPHPを採用することになったのは、PHPが得意な開発者が入社したという単純な理由からだったという。だが、無料で投資リスクが少ないということで、採用の際には特に問題にならなかったという。また、実際に採用して感じた利点として安武氏は、オープンソースのためドキュメントが多く、わからないことがあってもすぐに本やウェブで答えが見つかったことや、スクリプト言語は再起動が必要ないため、楽天のように1日24時間決して止めることのできないシステムに向いていることなどをあげる。また、これまで使用した実感として、安定性は十分だったという。
楽天の楽天事業カンパニー開発本部 開発推進部 部長、安武弘晃氏 | |
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オープンソースの採用は不安があるのではないかとの声もあるが、安武氏は「システムというのは積み木のようなもの。問題が起こるとしたら組み合わせの問題だろう。これまで楽天では工夫してシステムを積み上げていったので、PHPの大規模開発も問題なく成り立っている」という。
ただPHPに全く問題がないわけではない。安武氏はPHPの課題として、コネクションプールが使えないことや、ウェブサーバを複数にした場合セッションが使いにくいこと、さらにはPHP開発者がまだ数少ないこと、テストツールなどサードパーティーベンダーからの製品が少なく、選択肢が限られていること、バージョンアップが頻繁なことなどをあげている。
それでも安武氏は「PHPはよい選択肢のひとつだ」と語る。「開発期間が短くて済むため、数カ月単位で環境が変わってしまうインターネット業界に適している。PHPは早くて安くてできないことはほぼないと言ってよいだろう」と安武氏。また、「商用、非商用に関係なくバグは存在するものだし、商用だからといって永続性が保証されているわけではない」とも語る。
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