2011年7月24日、地上デジタル放送完全移行は本当に可能なのか――この10年間、何度となくあがった疑問。総務省や放送事業者の姿勢を見る限り、その答えは限りなく「Yes」に近い。しかし、期限が残り1年を切ったこの段階においても、いくつかの不安材料が残っているのも事実だ。総務省が6月に公表した「地上デジタルテレビ放送に関する浸透度調査(PDF)」の結果を参考にしつつ、今後の課題や方向性を探っていく。
現状、地上デジタル放送完全移行における最大の課題は「テレビの買い替え」だ。2010年3月時点でのデジタル対応テレビ普及率は83.8%(4,190万世帯相当)で、同時点での普及目標値(81.6%)を2ポイント上回る数値だ。
これについては、調査を担当した総務省も「勇気づけられる数値」であるとしている。しかし、数値を地域別、あるいは世帯年収別に区分けすると課題が浮き彫りとなる。
まず地域別。東名阪に次ぐスピードで地上デジタル放送を開始した富山県の88.8%を筆頭に、47都道府県中25県が全国平均以上。36位の奈良県までは80%以上の普及率であり、44位の徳島県でも75.3%までは到達している。
気になるのは、平均から10ポイント以上離れたワースト3県。45位長崎県72.9%、46位岩手県66.7%、最下位沖縄の65.9%という数値だ。総務省は「離島(長崎、沖縄)や山間部(岩手)などの事情から放送エリアカバー自体が遅れたことが要因」と分析するが、残り1年あまりという状況下での普及値としてはあまりに低い。
こうした状況はメーカーも気にとめているようだが「普及率の低い地域を重点的にフォローするなどの営業対策は考えていない」(大手メーカー)とのこと。社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)も「地域販売店などと連携して普及促進ツールを増やすなど、重点的なPR強化を行っていく」としており、駆け込みでの需要増やアンテナ工事増などは避けたい方針だ。
次に世帯年収別。年収1000万円以上の世帯で91.2%もの普及を誇り、以下、年収区分(200万円ごと)が下がるごとに数値が後退。第5区分である年収200〜400万円の世帯で平均を割り込むが、それでも80.4%と悪くない数値だ。ところが、年収200万世帯以下となると一気に下がり、普及率は67.5%にとどまっている。
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