もはや地上波とネットを区別する意味ない--radikoで見えたラジオ業界の地殻変動

 インターネットで聞けるIPサイマルラジオ「radiko」。3月15日の試験サービス開始から1週間で総ストリーム数523万、約4710万ページビューを達成し、運営するIPサイマルラジオ協議会が「予想をはるかに超える結果」と発表するほどに至った。

 また、サービス開始直後から非公式ではあるが有志たちが「CoRadiko」「radipo」「radika」「らじったー」「rdk.me」などの周辺サービスを次々と公開して話題になり、さらにはradiko聴取用のiPhoneアプリ「ラジ蔵」もリリースされた。アプリは、非公式ながら数十万ダウンロードを記録しているとも言われる人気ぶりだ。4月13日には公式ガジェット「radikoガジェット」も公開された。

 radikoの開始によって「こんなにラジオに熱中する人たちがまだいたのか」と筆者もラジオ業界関係者も改めて認識することになった。しかしその一方で4月7日、公式サイトでの聴取に絞るべくセキュリティ強化の宣言を出すに至る。

 このセキュリティ強化には、「地上波アナログ(地アナ)ラジオのサイマル配信」という名目を守る意味合いが大きい。地アナが聴取できない地域なのにネットだと聴取できてしまうとなると、放送の県域免許に抵触することになる。これを恐れての対応なのだが、実は一部の地域では、東京で聴取していようとも、接続先のサーバが関西だったら大阪の放送局が聞こえてしまうといった不具合が頻発していた時期もあったそうだ。

 不具合については現在対処中とのことだが、まだ完全には改善されてはいない。この際「どこでも聞けるようにしましょうよ」と言いたいところだが、それは今後IPサイマルラジオがさらに盛り上がりを見せ、民意によって電波法が改正されるのを待たなければいけない。まずは「こうすれば東京で大阪のラジオ局の放送が聞けるぞ」などと騒がず、静かに民放ラジオ局各社の頑張りを応援したいところだ。

 IPサイマルラジオ協議会もそんな“地域判定の裏技”以外のユーザーの動向には比較的肯定しているようだった。しかし4月20日になって、負荷の問題から特定の録音アプリケーションからのアクセスに制限をかけると発表している。

 しかしこうした一連の騒ぎのおかげで、ラジオが久々に注目されているのは事実。J-WAVEによれば、radikoはリスナーにも大変好評で「特に今までラジオから遠ざかっていた人々が、これを機に戻ってきているよう」(J-WAVE デジタル事業部長の小向国靖氏)だという。

 J-WAVEでは、radiko以外にも「Brandnew-J」というインターネット/地上波デジタル(地デジ)ラジオを提供している。これはネットで全国どこからでも聴取できるため、一部の番組などは「番組宛てメール投書の約半数以上がネットラジオリスナーという状況」(小向氏)だそうだ。

 また文化放送では地デジラジオ「超A&G+」のサイマル配信登録者数がこの2月に100万人を超えた。超A&G+は人気のアニメ声優やゲーム情報に特化して番組が編成されているが、PCでのネット配信にはじまり、地デジラジオチューナー対応の携帯電話や電通が提供するiPhoneアプリ「kikeru radio」などで聴取でき、まさに“ユビキタス時代のラジオ”とも言うべき状況を生み出している。

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