Appleの「iPhone 5c」は、その本来の性質に対する誤った見方に苦しめられている。
2013年に入ってiPhone 5cについての情報がリークし始めると、テクノロジ業界の観測筋は、これが以前から予測されていた「iPhone mini」ではないかと推測するようになった。こうした予想の根拠とされていたのは、かつての「iPod mini」の成功だけだ。iPod miniはAppleの旗艦製品だった「iPod」よりも小型で安価であり、後にこの製品ラインで最も売れたモデルになった。
そうした製品を出すには完璧なタイミングだとテクノロジ業界は考えた。Appleは300ドル以下の「Android」搭載端末に新興市場のシェアを奪われてきたからだ。Appleは米国時間9月10日、iPhone 5cを正式に発表したが、iPhone 5cはそうした端末ではなかった。iPhone 5cの最低価格は契約付きで99ドル、契約なしでは500ドル以上になる。そのような端末に、テクノロジ関連のメディアや市場アナリストは難色を示した(実際に鼻で笑った人々もいる)。
しかし、Appleを評価することは物事の両面を見るということだ。同社が言っていないこと、していないことについても、同じように詳しく見る必要がある。なぜなら、Appleはごくわずかな情報しか公開しないうえに、その製品数の少なさゆえに、あらゆる製品の決断をめぐって極めて周到に計算しているからだ。
AppleがiPhone 5cでしようとしていることや、それが筋の通ったことである理由を理解するには、次の2つの要素を考える必要がある。
Appleが毎年9月に行う製品イベントでの恒例行事の1つが、新しいiPodの発表だ。2013年はそれがなかった。AppleはiPodの2012年モデルの販売を続けている(オンラインストアでも、小売店でもまだ入手可能)ものの、製品寿命はすぐに終わりを迎えるだろう。
Appleは7月、同社の決算発表の電話会議において、iPodの販売台数が前年比で32%減少したことを報告した。iPodシリーズの歴史上、最も大幅な減少の1つである。これが重大な意味を持つのは、iPod touchが過去数年間、売れ筋商品であり続けてきたからだ。つい最近の2011年までは、iPod touchの販売台数が「iPad」に匹敵する四半期もあった。
iPod touchは子どもや10代の若者の間で極めて人気が高かった。彼らもiPod touchを使えばWi-Fi経由でiPhoneアプリの恩恵を受けることができる。2007年から2012年末までのiPod touchの販売台数は8000万台以上に及ぶ(一方で、iPhoneは同じ時期に2億4400万台売れている)。
iPod touchのエントリモデルの価格が199ドル(iPhoneのエントリモデルを2年契約付きで買うのと同じ価格だ)を下回ることはないものの、iPhoneの場合のように、データプラン付きのスマートフォン契約に毎月70ドル支払う必要がない点は魅力だった。しかし、スマートフォンの経済はここ12カ月で大きく変化している。
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