Appleは次々にヒット商品を生み出している。同社が新しい「iPhone」を発売すると、500万人もの人々が週末のうちにそれを手に入れた。「iPad mini」は10月中の発表が予想されているが、2012年末までに1000万人のユーザーの手に渡る可能性がある。そしてそれは、ライバル企業が、ほぼどんな目利きの顧客のニーズにも合うような価格、サイズ、機能を備えた、はるかに多岐にわたるスマートフォンやタブレットを提供しているにもかかわらず、そうなる可能性がある。
Apple製品のけた外れの人気と利益性は、1つには、製品の品質や一貫性、そしてシンプルさに基づいている。Appleは選択のパラドックスという落とし穴を回避している。これは心理学者のBarry Schwartz氏による、選択の自由がありすぎると選択自体が難しくなるという説だ。Appleの場合、7844PQCと6533PHXと5055PDQのどのモデルにしようかと選ぶ必要はないし、どのOSを買うべきかを決める必要もない。
「iPhone 5」が欲しいなら、サイズは1種類、色は2種類で、ストレージとネットワークにはいくつかの選択肢がある。iPhoneの使い方を既に知っていれば、新しいバージョンであってもユーザーのスキルが試されるようなことはない。タブレットはどうだろうか。Appleには、9.7インチディスプレイを備え、ストレージと接続方法を選択できるモデルが1つある。
Appleは最も機能の豊富なモバイルデバイスや、最先端のモバイルデバイスを提供しようとはしない。AppleのチーフデザイナーのJonathan Ive氏が言うように、「われわれのゴールは非常にシンプルである。より良い製品をデザインし、作ることだ。より良いものを作れない場合は、作らない」のである。
4インチより大きなディスプレイは、スマートフォン向けにはより良いものではない。Appleは、スマートフォンは片手で操作できなければならないと考えており、提供するのは4インチディスプレイのiPhone 5か、先行機種である3.5インチディスプレイの「iPhone 4S」と「iPhone 4」のみだ。18%薄く、20%軽く、2倍高速になり、わずかに長くなったiPhone 5のほうが、「Maps」アプリの不具合はあるにしても、先行機種より優れている。
Ive氏はLondon Evening Standardのインタビューで、「われわれのライバル企業のほとんどは、何か違ったことをしようとする。あるいは、自分たちを新しく見せたがっている。それらは完全に間違ったゴールだと思う。製品は純粋に、より良いものでなければならない。これには基本的な規律が必要だが、それがわれわれを後押ししている。つまり、より良いことをしたいという、心からの純粋な欲求である」と語っている。
Appleが限られた選択の自由しか提供していないのに対して、ライバル企業は、複数の選択肢があるビジネスを行っている。そうした企業は、より多くの価格ラインと、機能の選択肢を提供しており、ディスプレイのサイズやOS、カメラ、ネットワーク、チップなどはさまざまである。さらにそうした企業は、単に違っていたり、新しかったりする以上のことに取り組んでいる。
例えば、Motorolaが最近発表した新しい「Android」搭載スマートフォンには、4.3インチのEdge-To-Edgeディスプレイを搭載した99ドルのモデルと、4.7インチのHDディスプレイを搭載したモデル、さらにバッテリ持続時間が最大32時間のモデルという、3種類がある。サムスンは、解像度が1280×720ピクセルの4.8インチHD Super AMOLEDディスプレイを搭載したAndroidスマートフォン「GALAXY S III」を、発売から100日で2000万台販売としたとしている。
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