9月13日に発表されたGoogleとKDDIの新プロジェクト「みんなのビジネスオンライン」は極めてシンプルに、日本の中小企業に期間限定ながら無料でサイトを提供しましょう、というものだ。
Googleの発表によれば、日本の企業の99.7%を占める中小企業(特に零細企業)のサイト保有率は24%に留まる。つまりその大多数、実に8割近い企業はネット上に存在していないことになり、そこへのアクセスを改善すれば中小企業の経済の活性化につながる、というのが彼らの考えだ。
今回提供されるのは、ウェブサイト制作サービスのJimdoや独自ドメインなどのツール類とセミナーなどのプログラムだ。これらを1年間無償で利用できる。彼らの狙いである中小企業のオンライン化、地域経済の活性化はどこまで実現できるのだろうか。発表内容をいくつかのポイントに整理した。
前述の「中小企業のサイト保有率24%」という数字はかなり刺激的だ。冒頭では「8割近い企業がネット上に存在しない」と書いたが、実際は自社サイトを保有していないだけで、それぞれの事業ドメインに提供されるサービス――たとえば飲食店ならぐるなび、小売なら楽天など――に登録しているのが現実ではないだろうか。つまり、ある程度ネットへの関わりを持った「自社サイト保有」予備軍が今回のプロジェクトで実際にサイトを開設する可能性は十分に考えられる。
問題は立ち上げの方法だ。たとえJimdoというツールの使い勝手がいいといっても、自社サイトを立ち上げるのだから当然見た目がよく、機能的であり、そしてなにより儲かるサイトを作りたいと考えるだろう。しかしそこまでツールを使いこなすには時間がかかる。
そこでこのプロジェクトがとった解決策が「9割方完成している業種別のテンプレートを用意する」という方法だった。飲食店や小売店、アパレル、不動産など具体的な14業種についてほぼ完成されたテンプレートが実に100種類以上用意されている。
Jimdoジャパンの高畑哲平氏は「サイト立ち上げの最大の障害は価格とスキルとアイデア。価格は今回のプロジェクトで敷居を下げられたので、スキルとアイデアの部分をこのテンプレートという方法で解決したかった」と話してくれた。
“中小企業”とひとくくりしているが、実際に想定されているのはレストランや洋服店、小売りなど個人事業に近い事業者だ。プロジェクトの拡大にあたって商工会議所をパートナーに選定しているのもそれが理由だろう。利用者拡大施策についても、商工会議所と連携してセミナーを開催するなど、かなり地道な作戦を展開するという。
小規模事業者の情報化をどこまで推進できるか、という課題は地味ながら非常に重要だ。プロジェクトではセミナーにITコーディネーターの有資格者を講師に選定し、ツールの使い方や情報の配信方法などをレクチャーする、ということになっているが、一朝一夕に実現できる類のものではないだけにその成果については興味深い。
また、首都圏だけでなく地方地域への展開を当初から念頭にいれているのも特徴だろう。地方は特に情報化が進んでいる個所とそうでないところの格差が激しく「地域の情報化は、本当にここまでやるのか、というところまでやらないと進まない」(高畑氏)と話すように、一律に展開することが難しい。従来、中小企業庁などの行政が主な役割を果たしてきたこの分野に、民間が主体となってトライすることでどのような結果が生まれるだろうか。
プロジェクトには中小企業の行政窓口としての役割をもつ中小企業基盤整備機構が参加しているが、このような行政や地域社会との連携をいかに密にかつスムーズに進めるかは、特に地方での展開で重要な鍵になるだろう。範囲が全国に渡ることから、マスに対する認知の拡大も重要な要素だ。
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