AT&TのT-Mobile買収、業界の経営陣はどう見る?

Marguerite Reardon (CNET News) 翻訳校正: 編集部2011年03月25日 16時33分

 フロリダ州オーランド発--米国で開催中のイベント「CTIA 2011」にて、CNBCのJim Cramer氏がホストを務めるパネルディスカッションにワイヤレス事業者の最高経営責任者(CEO)らが参加、熱い討論を繰り広げた。

 Cramer氏は、CTIA 2011の午前中の基調講演にパネルのホスト役として登場し、AT&Tのワイヤレス部門の責任者を務めるRalph de la Vega氏、Verizon WirelessのCEOであるDan Mead氏、Sprint NextelのCEOを務めるDan Hesse氏に対し矢継ぎ早に議論を投げかけた。同氏はまず、米国時間3月20日に発表された390億ドルでのAT&TによるT-Mobile USAの買収提案について、「君のせいで日曜が台無しになったよ」とジョークを飛ばした。

 今回の買収提案により、AT&Tは米国のキャリアでは最大となる1億3000万人近くの加入者を確保することになり、同社とVerizon Wirelessの合計でワイヤレス市場の約80%を占めることになる。この買収で、米国ワイヤレス市場の勢力図は大きく塗り替えられるだろう。まず米国の4大ワイヤレスキャリアの中で最小かつ低価格路線のリーダーだったT-Mobile USAが消え去り、GSMという最も普及した技術を採用するのは米国の主要キャリアではAT&Tのみということになる。

 AT&TのDe la Vega氏は、同社がT-Mobileに関心を持ったのは、T-Mobileの周波数帯域と4G LTEサービスのカバレッジ拡大にあると説明した。

 「(今回の買収の)大きなきっかけとなったのは、新たな帯域が必要だったためだ」とDe la Vega氏。「われわれのネットワーク上のデータは4年で8000%も成長した。4年でこれほど成長するものはそう多くはない。今回の買収により、両社が共に直面している帯域の枯渇が軽減されると見ている」

 帯域不足については、連邦通信委員会(FCC)会長のJulius Genachowski氏もパネルの直前に行われた基調講演にて強調している。同氏によると、現在FCCでは500MHzのワイヤレス帯域を10年以内に無線ブロードバンド用に開放すべく取り組んでいるとのことだ。これは、全米ブロードバンド報告書にて主な提案として挙がったものだという。

 しかし、ステージ上の幹部のすべてが帯域不足解決のためにこれほどの巨大な合併が必要だと考えているわけではない。この件に関して直接質問されたSprintのCEOであるHesse氏は、「私の意見など関係ない。FCCや司法省が決めることだ」と、うまく質問をかわした。

 ただHesse氏は、ワイヤレス市場が統合されてしまうこと、またそれが原因でイノベーションが抑圧されてしまうことを懸念している。4G LTEサービスを米国に普及させたいという考えについても同氏は、「AT&TとT-Mobileはすでに4Gを提供していると思っていたが」との見解を示した。

 AT&TとT-MobileはHSPA+を4Gとして市場に出しているが、多くの業界人はこの状況に対し、両社がネットワーク技術に無責任な態度を取っていると考えている。

CTIA CTIA 2011にて行われたパネルディスカッションの様子。写真左から、CNBCのJim Cramer氏、Verizon WirelessのCEO、Dan Mead氏、Sprint NextelのCEO、Dan Hesse氏、AT&Tのワイヤレス部門長、Ralph de la Vega氏(写真提供:CNET/Marguerite Reardon)

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