リアルの世界に生きる人は、ウェブ時代をどう生きたらいいのか--梅田望夫氏講演:前編 - (page 2)

永井美智子(編集部)2007年11月16日 18時32分

本を頭で読むか、心で読むか

 本の読み方にはいろいろあります。皆さんがもしブログに本の感想を書いてたら、僕は絶対に読んでます。それなりにITリテラシーはあるので、いろんな道具を使ってリアルタイムで捕捉しています。

 「ウェブ時代をゆく」については先週の火曜(※編集部注:11月6日発売)からお祭りが始まりましたね。だから、ほとんど寝られないんですよね(笑)

 日本では午後10時から午前1時半の間が、ブログが書かれるピークタイムで、その間には時速4個半でエントリが上がってきます。僕はそのURLを全部転記して、意味のある部分をコピーして、はてなグループに転記して編集者と共有する作業をしているんだけど、そうなるとそれ以外何もできなくなる。

 だんだん眠りが浅くなってくるんです。午前2時か3時に一度目が覚めて、ネットの世界はどんどん動いているからとんでもないことが起きてるとまずいな、と思って見ると7〜8個エントリが上がっている。あ、「迷惑だから書くのよそう」なんて思わないで(笑)。楽しみだから。でも、そういう風にしていると大変です。

 それで分かってきたのは、本を読むのには2タイプあるということ。1つは頭で読む方法、もう1つは心で読む方法です。

 「ウェブ時代をゆく」は頭で読む人にとってはダメですね。そういう人にとっては、書かれているファクト(事実)が新しいか、自分が知らないことかが関心事なんです。自分の人生と遠いところにある。知を傍観者として論評する。学者に多いですね。もっとも、そうじゃなきゃ学者は務まらない。コンテンツで人生を惑わされてたら学者はできないですから(笑)

 でも僕を含めた市井の人、もがきながら生きている人は、生きていくエネルギーや答えを得るために、心で本を読む。

 「ウェブ進化論」は頭で読む人にもOKなんだけど、「ウェブ時代をゆく」は物足りないと思う。ただ、心で読む人には届くものがあるんじゃないかと思っています。

 僕は生きるために水を飲むような読書というものをしてきて、人生を切り開く上で重要な本があると感じている。だから「ウェブ進化論」に次ぐ2冊目は、そういう本にしたかった。でもそういう本は書くのが100倍難しいんですよね。無謀な挑戦したな、という気もします。ただ、届くべき人、若くて一所懸命まじめに生きようとしている人には何か役立つものが作れたかなと自負しています。

 ネットに無限の情報が溢れているから、本を書くのは難しい時代ですよね。予定外に時間がかかったのはそういう理由があります。誰も知らないことなんてないんですよ。ネット上では競い合うように、いろんな人が「新しいことを知った」と言っている。

 僕はGoogleやAppleのことを書いていても、そこに勤めている人ほどは知らないんです。何を書いても、中の人に匿名で「違う」と言われる可能性はある。だから、頭で読む人のための本はすごく難しくなってる。構造化するとか、分かりやすく書くとか、そういうことが付加価値になる。

 一方で、心で読むための本にも違った難しさがある。そうつくづく思う。

 今回の本で、本の中に書いていないキーワードは「Rest of us」(残された自分たち)。僕は1980年代にAppleとたくさん仕事をしたんだけれども、当時Appleは、自分たちがやっていることは「“Computer for the rest of us”(残された自分たちのためのコンピュータ)を作ることだ」と言っていた。その頃、コンピュータはものすごくITリテラシーが高い人が使うもので、それ以外の「残りの人」は使えなかった。Windowsもない時代で、コンピュータを使うためにプログラミングの勉強する時代だった。

 今回の本のタイトルを英語で書くとしたら“Web Revolution for the Rest of Us”(残された自分たちのためのウェブ革命)。ただ、僕は英語が下手なので、英語で書くのはありえないと思った。

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