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需要無視の“内情”を露呈した「YouTube 対 テレビ局」 - (page 3)

高瀬徹朗 2006/11/17 08:00

見えてしまった動画配信の限界

 YouTubeをうまく利用しようという放送局がないわけではない。

 東京地区の独立系UHF局である東京メトロポリタンテレビジョン(東京MXテレビ)はこのほど、一部番組についてYouTubeへの動画提供を開始した。ビデオリサーチ社の視聴率調査上、「その他」に当たるMXテレビならではの大胆な取り組みと言える。しかし、いかに接触率の高いサイトにコンテンツを投入したところで、それが局側の選定による内容であれば、民放各局が運営するVODサイトと大差ない。究極のプル型放送を活用していると評価するには及ばず、というところだろう。

 結局のところ、放送事業者ができる通信の活用は「放送の補完」に過ぎない。視聴者ニーズに応えた通信活用を実施するためには、「自分たちで作った番組のどの部分でも、いつでも見ていただいてかまわない」というスタンスをとるのが理想。しかし、それは現行のルールやビジネスモデルでは不可能だ。

 もっとも、全放送局が連合を組んで「実施する」と言い放てば、さすがの権利者もおとなしく従うのではないかと想像できなくもない。しかし、テレビが最大のメディアとして君臨している背景には、最大の媒体を持つ放送事業者と、強力なコンテンツを生み出す材料である権利者との“蜜月の関係”がある。その関係に別れを告げることは、放送サービスそのものの死活問題にもつながる。

 放送を支えているのはあくまでも広告収入。それがあってこそ高い制作費(出演料を含む)をかけて番組を作ることができるのであって、いくらテレビ局が優秀な人材を抱えていると言っても、アイデアだけで勝負できるほど、現実は甘くない。

 放送事業者はこうした内情を優先し、放送の「補完」との位置づけで動画配信に取り組む限り、ネット時代の視聴者に受け入れられる「放送・通信融合」を実現できるとは考えづらい。今後、民放キー局および通信事業者などが提供するVODサービスが飛躍的に伸びる可能性も少ない。にもかかわらず、YouTubeのような存在を容認することもないだろう。

 つまり、放送と通信が融合するであろう未来に向かって、視聴者の需要と放送事業者の取り組みは、真逆の方向に突き進んでいるのだ。

 さらに、「究極のプル型」は世間的に認知されてしまった。当然、YouTubeで掲載される動画の内容に対する是非を議論することも重要だ。それを十分に認識した上であえて言うと、YouTubeを訪れれば、テレビ局のアナウンサーがビルから転落して大怪我をするシーン、ロケ中に番組スタッフが老婆を怒鳴りつけるシーン、番組の司会役がVTRにキレてスタジオを後にするシーン――など、視聴者が「見たい」と思っても2度と見られないはずだった数々の衝撃映像(?)が、そこにはある。

 ワンセグの発展や将来のホームネットワーク化傾向を見る限り、放送・通信融合による高いサービスモデルが構築されることは間違いないだろう。実際、コマース分野ではコマースの事業者はもちろん、放送事業者も積極的な実験を推し進めている。しかし、一連のYouTube削除騒動により、近い将来の導入が予定されているサーバ型放送を含む動画配信の分野における“限界点”は、見せつけられてしまった感がある。

 それでもなお、「放送・通信融合」は理想のまま存在し続けるだろう。もちろん、視聴者の需要が高まり、理想が現実に近づく可能性もなくはない。

ただ1つ、現時点で確実に言えるのは、YouTubeの登場により、動画配信でユーザーを満足させるためのハードルは、確実に上がってしまったということだ。

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