それでも、複雑な放送業界のなかを渡っていくことは、Googleなどの検索各社にとって大きなチャレンジとなる可能性が高い。オンライン放送局のビジネスモデルはさまざまで、またブロードバンド経由の放映権獲得は厄介な問題にもなり得る。
たとえば、もしGoogleとYahooが自社のウェブサイトでビデオを流したい場合、放送局との間でデジタル著作権の問題を解決する必要がある。また放送局側も、出演者やプロデューサー、ミュージシャンなどとのインターネット著作権の問題や、系列局との間で周波数帯域に関する権利の問題を解決する必要がある。
さらに、既存のビジネスモデルにも注意しなくてはならない。たとえば、CBS Newsではネットで無償のビデオ配信を行っており、またABC Newsはサブスクリプション形式の有料ビデオサービスをAOLやSBC Yahooに提供している。CBSは広告販売の目的でトラフィックを増やすことが希望かもしれないが、ABCの方はビデオ検索でサブスクリプションサービスを売り込むことが希望かもしれない。
関連性の高いオーディオやビデオを見つけ出すためには、検索技術にも大幅な改良を加える必要がある。ウェブ利用者は現在、検索する言葉を入力して膨大な数の検索結果を取得しており、最初に表示される10件のなかに目的のサイトがないと、大半の人は検索を断念してしまう。しかし、オーディオやビデオのクリップなら、各クリップの長さが15秒〜数分あるため、認識率は上がりはしても下がりはしない。
Googleの極秘プロジェクト
Googleのテレビ検索プロジェクトは極秘に進められており、今のところは一部の放送局幹部しかデモを目にしていない。このサービスを構築するため、同社はテレビの生放送を録画し、関連する番組のクローズドキャプションをインデックス化している。このサービスでは、ビデオのテーマやコンセプト、関連キーワードを特定するために、このテキストを使い、検索用のトリガーとしている。このソフトを使うことで、たとえば「Jon Stewart」のようなキーワードを入力すると、出演した番組のビデオクリップがクローズドキャプションのテキストとサムネール付きで取り出すことが可能になる。また「Crossfire」という番組名で検索を絞り込むと、映画のフィルムを模したページが現れ、大きな注目を集めたStewartとCNNの「Crossfire」司会者との争いに関するさまざまな静止画やクローズドキャプションの抜粋も表示される。そして、さらにクリックすると同番組の特定の部分を視聴できる、という仕組みだ。
Googleは、著作権所有者との訴訟を招かないようなビジネスモデルを見つけるためにいくつかの放送局にアプローチした。Google自身でも、ビデオの検索結果の横に関連性のある広告を表示することは可能だが、しかし放送局の方はDVD、コンテンツ・サブスクリプション・サービス、あるいはビデオのスポンサー広告販売用として検索を使いたいと考えるかもしれない。
「ビジネスモデルについて話すのはあまりに時期尚早だが、しかしだれもが関心を寄せていることは確かだ」とある情報筋はいう。「ミーティングでは、まずクローズドキャプションを巡る訴訟の回避が話合われ、それからこの技術の商用利用に関する可能性が検討される」(同情報筋)
これまでに同様のサービスを試みて失敗した会社がいくつかある。ビデオクリップ、映画の予告編、そしてミュージックビデオの検索サービスを目指したFasTV(本社:カリフォルニア州ロサンゼル)は、資金を使い果たし、コンテンツプロバイダーとの強い結びつきがありながらドット・コム不況のさなかに倒産してしまった。同社はMGMやReuters、American Film Instituteなどとコンテンツのライセンス契約を結んでいた。またVirageもビデオやオーディオを検索する技術を開発したが、同社幹部のなかにはソフトウェアの弱さを指摘する者もいた。
Googleはすでにビデオ検索と関連広告の表示に関する特許を申請している。たとえば2003年9月には、Google共同創業者のLarry Pageが、「メディア検索の手法」という一見したところ適用範囲が広そうな特許を申請している。同社のシステムは、格納されたデータセット、あるいは公開されたコンテンツやメディアを表すテキスト形式の「メタタグ」を利用し、検索語に合致するマルチメディアを探し出す。この特許申請書には、「公開する側が、著作権で保護された素材の表示に対する承認を許可規約に則って与える」とある。
さらに最近では、GoogleはNational Public Radioなどと協力し、クリップを自社のニュース検索エンジンで検索できるようにするため、インターネット上にある既存の音声原稿のインデックス化を進めている。
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