NTTドコモは10月31日、2013年3月期までの中期経営計画を明らかにした。「モバイルの世界は量的に飽和しているが、質的にはまだまだ伸びるのではないか」(代表取締役社長の山田隆持氏)として、顧客満足度の向上と新サービスの開発を進める。
NTTドコモでは、新規顧客の獲得から、現在いる約5400万人の顧客の維持に方向転換し、アフターサービスの拡充や通信品質の向上などを図り、2011年3月期中に顧客満足度1位となることを目指す。
下り100Mbps超の通信が可能な高速次世代通信技術「LTE」については、2010年から導入する。動画などのリッチコンテンツに対する需要が増えるとともに、パケット定額制の普及でトラフィックが増加することに対応するものだ。ただし、諸外国に先んじてFOMAを導入した結果、サービスが普及せず端末や基地局のコストがかかった反省から、「世界の先頭集団と一緒にLTEを推進していく」(山田氏)と強調していた。
LTEは通信の遅延が少ないという特徴を持つ。このため、ドコモではこれまで端末だけで処理していた情報を、ネットワークで接続したサーバで一部処理する方向に変えていくという。より多くの情報を瞬時に処理できるため、例えばカメラの映像に周囲の情報を重ねて表示したり、喋った声をリアルタイムに翻訳、音声合成して、本人の声で別の言語を話しているように通話したりといったことが可能になるという。
サービス面では、「“●●できるケータイ”から、“●●してくれるケータイ”へと進化させる。アラジンの魔法のランプのような究極のケータイを目指す」(山田氏)といい、普段利用している電車の運行情報や店舗のバーゲン情報を知らせるなど、エージェントとしての機能を持たせる。
また、「携帯電話サービスの主力は動画になっていく」(山田氏)として、道案内や観光情報、緊急医療などの動画コンテンツを拡充する。動画コンテンツプロバイダーへの出資や提携を推進する考えも示した。
端末のプラットフォームについては、ドコモ向けのソフトウェアを「グローバルアプリ」と「オペレータパック」の2つにパッケージ化し、世界共通で使えるものにしていく。さらに、Androidなどのオープンプラットフォームも採用し、端末の開発コストを抑える。将来的にはオープンプラットフォームとドコモ向けのソフトウェアを統合させたい考えだ。
このほか、環境、健康管理、決済、教育支援、安心安全の5つの業界向けに、情報流通を効率化するための基盤を構築して提供する。例えば医療機関などに対し、利用者が病気予防のアドバイスなどを効率的に受けられるようにするシステム基盤などを販売するという。
さらに、ネットワークのトラフィック情報やGPSの位置情報などを集約して分析し、都市計画などに役立てたいという意向も示した。「ライフログが注目されているが、これは個人に光を当てたもの。携帯電話全体に焦点を当てて、数千万人がどう動いているかを把握し、道路をどう作るかといったことに貢献できないかと考えている」(山田氏)。ただし、全ユーザーのGPS情報を1年間集めると1ペタバイト(※1ペタは10の15乗)になるという。プライバシーの問題に配慮しながら、こういった膨大な情報を処理する技術を開発していきたいとした。
国際展開については、引き続き国際ローミング収入の拡大を図る。同時に、海外の日系企業向けのサービスや、海外企業への出資も進める。海外の通信事業者だけではなく、将来携帯電話事業との相乗効果が見込める周辺分野の企業についても、出資、提携を進める考えを示した。
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