アイピーモバイルは4月10日、携帯電話事業への参入計画を見直す方針を明らかにした。2007年春の参入を予定していたが、事業に必要な資金が不足した。新たに森トラストの傘下に入り、経営体制や事業方針についても変更する。
これまでアイピーモバイルの発行済み株式の69.23%を所有していたマルチメディア総合研究所が、保有する全株式を森トラストに譲渡する。売却予定金額については明らかにしていない。森トラストはアイピーモバイルの申し出により、増資についても応じる方針だ。
これに伴い、アイピーモバイルは経営体制や事業計画を見直す。具体的な内容については「これから森トラストと協議して決定する」(アイピーモバイル代表取締役 執行役員社長の杉村五男氏)という。
アイピーモバイルによれば、携帯電話事業に必要な資金は「関東圏内のみの場合で約600億円。地方でも展開すれば1000億円規模になる」(執行役員 経営・管理部門担当の竹内一斉氏)
総務省では携帯電話免許の交付から2年以内のサービス開始を求めており、2007年12月までにはサービスを開始する計画。ただし当初の事業計画の修正が必要となるため、総務省には今後事業計画の変更申請をするという。
アイピーモバイルはTD-CDMAと呼ばれる独自の通信規格を採用している。この規格を使うことに今後も変更はないという。ただし、TD-CDMAを採用している企業は世界的に少ないことから、通信機器や端末のコストが高くなりがちと言われている。
アイピーモバイルは企業再生コンサルティング会社のリヴァンプと業務提携しており、事業再生への支援を受けている。リヴァンプとの関係については「今後、森トラストの意向も含めて話し合う」(杉村氏)と述べるにとどめている。
この経緯について森トラストは、マルチメディア総研とアイピーモバイルの両社から申し出があり、株式取得を合意したと話している。
また、アイピーモバイルが利用しているTD-CDMA技術を開発した慶応義塾大学教授の中川正雄氏が、森トラストの社長である森章氏の実兄、森敬氏(元慶応義塾大学理工学部教授)の弟子にあたるという事情もあったという。
森トラストは不動産事業を主軸としており、汐留地域の再開発などの都市開発を手がけている。不動産事業の価値を高めるものに対しての投資部門を持っており、アイピーモバイルに対しての投資もその一環。アイピーモバイルの技術力や事業の将来性、都市生活者への利便性があると考えられることを根拠に、株式取得に合意したとしている。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス